首都で5万人がデモ アホック氏の逮捕要求 厳戒下、全国からイスタナに イスラム団体
イスラムの聖典コーランを侮辱したとして、アホック・ジャカルタ特別州知事に抗議する大規模デモが4日、中央ジャカルタのモナス(独立記念塔)広場周辺で行われた。全国各地のイスラム団体などから過去最大級の約5万人が参加し、アホック氏を宗教冒とくの容疑で逮捕するよう訴えた。デモ終了後、イスタナ(大統領宮殿)近くで一部が車などに放火、警察が催涙弾を発射し、けが人が出るなど深夜まで予断を許さない状況が続いた。
デモ隊はイスティクラル・モスクで金曜礼拝後、ガンビル駅や州庁舎を通ってイスタナ方面に行進。周辺道路を埋め尽くして「アホックを逮捕しろ」と訴えた。警察や軍など計約2万人が治安維持にあたった。
キリスト教徒のアホック氏は知事選に再選出馬中。9月下旬、住民の前で「コーランに惑わされているあなたたちは、私に投票できない」などと発言し、宗教冒とく容疑で刑事告発された。
イスラム強硬派団体のイスラム擁護戦線(FPI)などは10月14日、州庁舎周辺で5千人規模の抗議デモを実施。その後も全国各地で反アホック運動が展開されている。
今回のデモには、アチェやカリマンタンなど全国から参加者が集まった。ジャカルタ近郊からの集団が観光バスに乗って次々駆け付けた。
リアウ州プカンバル市の会社員、ムハンマド・イルファンさん(50)は「選挙や政治は関係ない。(アホック氏の発言は)私たちの宗教に関係すること。ジャカルタだけの問題ではない」と主張。デモのため、往復の渡航費など500万ルピアをかけて3日間の日程で訪れた。
これまでアホック氏への抗議活動に参加してこなかったジャカルタの住民もデモ隊に加わった。南ジャカルタ・スティアブディの会社員、イスマディ・ハサンさん(34)も「デモが(これまでにも)行われたのに、警察は今日までアホックを逮捕していない。警察や政府は信用しない」と訴えた。
西ジャワ州ボゴール市から参加したイスラム団体の約千人の一人、ヤシンさん(49)はイスラム以外の宗教も尊重するという。「アホックが華人のクリスチャンだから嫌っているのではない。同じように侮辱されれば、誰に対してでも抗議する」と主張した。
今回のデモでは、デモ隊の一部が沿道の公園で草花を踏みつぶさないよう呼びかけたり、袋を持参してごみ回収したりと、周辺環境への配慮も見られた。(木村綾、写真も)