「イスラムを侮辱した」 アホック氏発言が波紋 コーランに言及
アホック・ジャカルタ特別州知事がイスラムの聖典コーランの教えに触れた発言が「イスラムを侮辱した」との波紋を呼んでいる。同州知事選で再選を目指すキリスト教徒のアホック氏の選挙戦に影響が出ることも予想される。
問題となっているのは、9月27日、プラウスリブ県を訪れたアホック氏が住民の前で行ったスピーチ。アホック氏は「ユダヤ教徒とキリスト教徒を仲間としてはならない」とするコーランの第5章第51節に触れ、「コーランの51節に惑わされているから、あなたたちは私に投票できない。(中略)地獄に落ちるのを恐れて投票できないというのであれば、仕方ない」と述べた。この発言の動画がソーシャルメディアで拡散されると、各方面から反発の声が上がった。
イスラム強硬派団体・イスラム擁護戦線(FPI)のハビブ・ノフェル・チャイディル・ハサン氏は宗教冒とくだとして国家警察に通報した。オンライン署名サイト「Change・org」では5日、アホック氏に公式な謝罪などを求める署名の呼びかけが始まり、7日午後10時半までに6万5千人以上が賛同している。
騒動を受け、アホック氏は6日、動画は編集されたものだとして、発言全文の撮影動画を自らのフェイスブックやインスタグラム上で公開。地元メディアに対し「プラウスリブの住民に言ったのは、コーランの章句を使って私に投票しないように呼びかけている人種差別者や臆病者に惑わされるようであれば、私に投票しなくても良いということだ」と説明した。同氏はまた、自身のフェイスブックなどで「コーランを侮辱する意図はないが、コーランでも聖書でもほかの聖典でも、政治に使うことは気にくわない」と補足した。
■対抗馬は皆ムスリム
同州知事選を前に、候補者選びと宗教の関連性に関する世論調査が行われている。立候補した3組6人の候補者のうち、アホック氏は唯一のキリスト教徒で、対抗馬は全員ムスリムだ。
調査機関ポプリセンターが9月25日〜10月1日、600人を対象に行った世論調査では、ムスリムの42.5%が現職のアホック知事とジャロット・サイフル・ヒダヤット副知事を支持すると答えた。
同センターの記者発表で国立イスラム大学のアリ・ムンハニフ教授は「有権者が候補者を選ぶ際に、SARA(種族・宗教・人種・階層)は基準にならないということを示している」と分析した。候補者を選ぶ基準は「汚職がない」が30.2%、「確固たる姿勢」が30%、「庶民への親しみやすさ」が21.8%だった。
一方、インドネシア調査サークル(LSI)が9月28日〜10月2日、440人を対象に行った調査では、ムスリムの知事を望むという人の割合が55%に上った。3月時点の同調査では40%で、LSIのアルディアン・ソパ研究員は「アホック氏に知事になってほしくないと考えるムスリムが増えた」と述べている。(木村綾)