「女性支持獲得狙う」 アグス氏 「痛み伴わない開発」 アニス氏 アホック氏対抗馬 臨戦態勢 ジャカルタ知事選
統一地方首長選で行われるジャカルタ特別州知事選の候補が出そろった。立候補の締め切り直前まで選挙戦の構図が固まらない中、現職アホック氏(50)の対抗馬として政党連合が擁立したのは、行政経験は皆無のエリート軍人アグス・ハリムルティ・ユドヨノ氏(38)と、元閣僚のアニス・バスウェダン氏(47)。1カ月後、選挙戦の火ぶたが切られるのを前に、急きょ出馬が決まった両陣営は臨戦態勢に入っている。
民主など4党は、立候補締め切り日になり、それまで全く名前が挙がっておらず、行政経験もないユドヨノ前大統領の長男、アグス氏を担ぎ出し世間を驚かせた。
アグス氏は国軍士官学校を首席で卒業し、約15年にわたり軍人を務めたが、出馬に伴い退役。同氏は立候補を届け出た23日、「きょうは私の人生で歴史的な日になった。軍のキャリアを積むか、違う世界で生きるかという、簡単ではない選択だった」と目に涙を浮かべながら述べた。同氏の説明によれば、出馬打診されたのは立候補のわずか3日前。父ユドヨノ氏が険しい表情で長男初のスピーチを見守った。
アグス陣営の選対本部のメンバー、民主党のナフロウィ・ラムリ氏は、ファウジ・ボウォ氏と組み副知事候補として2012年の同州知事選に出馬、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)氏、アホック氏のペアと対抗した。38歳で政界入りを決めたアグス氏と、唯一の女性候補であるシルフィアナ・ムルニ・ジャカルタ特別州知事補佐官(57)のペアについて、ナフロウィ氏は日刊紙コランテンポの取材に「有権者の56%」を占める女性の支持獲得を目指す考えを示した。
■礼儀正しい候補
一方、州議会第2のグリンドラ党は福祉正義党(PKS)と共に、アニス氏と実業家のサンディアガ・ウノ氏(47)のペアを擁立。知事選の日程が発表された2月より出馬意欲を示していたサンディアガ氏に対し、アニス氏の名前は9月になって急浮上した。
アニス氏は07年に最年少でパラマディナ大学長に就任。14年の大統領選では、民主党の若手有望候補として名前が挙がったが、立候補せず、当時ジャカルタ特別州知事だったジョコウィ氏の選対チームの中心メンバーとして活躍。ジョコウィ政権で初入閣したが、7月末の第2次内閣改造で退任した。
アニス氏陣営の選対本部のメンバーを務めるグリンドラ党のシャリフ氏は24日、アニス、サンディアガ両氏のスローガンとして「痛みを伴わない開発」を打ち出した。
シャリフ氏は両候補を「礼儀正しく、スマート」なアニス氏と「勤勉」なサンディアガ氏と表現。生活必需品の価格安定や雇用の創出などの政策を掲げ、アホック氏に対抗する構え。アニス氏の選対本部にはアホック氏擁立を打ち出した闘争民主党(PDIP)に反発、離党したボイ・サディキン氏も加わる。
最大与党のPDIPは直前まで独自候補を擁立しようと試みたが失敗、ナスデム、ハヌラ、ゴルカルの各党が支持を表明していた現職のアホック氏に乗った。今後はPDIP中心で戦略を練り直し、三つどもえの争いに挑む。
選挙運動の解禁は10月26日、投開票は17年2月15日。(木村綾)