グーグルに追徴課税へ 財務省検討 法的措置も シンガポールで利益計上
財務省は、米IT大手グーグルがインドネシアで得た利益を税率の低いシンガポールに計上し、意図的に税逃れをしたとして2015年分だけで5.5兆ルピア(約420億円)を追徴課税する姿勢を示している。グーグルが応じない場合、法的措置も辞さない構えを強調している。
地元メディアによると、財務省税務総局がことし4月、グーグル・インドネシアに法人税などの課税対象になる「恒久的施設(PE)」として活動するよう要請した。9月に入り税務総局が海外メディアに、グーグルが当局の調査依頼を拒否したことを公表し、グーグルの税逃れ疑惑が明るみに出た。グーグル・インドネシアは利益をシンガポールにある法人分として計上し納税しているとされる。
財務省は、グーグルを恒久的施設に当たると見ており、スリ・ムルヤニ財務相は21日、「恒久的施設として税金を収めなければならない」と話している。これに対しグーグル・インドネシアは税制面でインドネシア政府と協力していくとする声明を出している。
グーグルは8800万人以上とされるインドネシアのインターネット利用者にとって主要検索エンジンで広告収入も大きい。税務総局はグーグル・インドネシアが昨年の収入に対し駐在員事務所にかかる税金しか収めておらず、納税額は売り上げの0.1%にも満たないと主張する。地元メディアの集計によると、インターネット広告収入の約70%がグーグルに関連している。
スリ財務相はグーグルの課税問題に対し「国のために最善を尽くす」と説明。ケン・ドゥウィスギアストアディ税務総局長は「グーグルと交渉はしない。法的措置も考える」と強調、税務調査を拒否しているグーグルに対して納税を促す姿勢を強調した。
近年英国やイタリアなど欧州各国やオーストラリアは課税分野の線引きが難しい情報通信(IT)企業に対して税逃れの追及姿勢を強めている。
インドネシアは、世界的に多国籍企業による税逃れを取り締まろうとする動きに同調している。経済協力開発機構(OECD)が中心となって「税源浸食と利益移転(BEPS)」と呼ばれる公平な国際税制システムの構築を目指すプロジェクトに「東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でもインドネシアは積極的な参加を表明している」(KPMG税理士法人の藤森康一郎氏)。
9月に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合に出席したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は、公平な国際税制の整備が新興国の税収増加につながると訴えた。(佐藤拓也)