刺激臭と色で議論 毒物専門家が証言 コーヒー毒殺事件
中央ジャカルタのカフェで1月6日、ワヤン・ミルナ・サリヒンさん(当時27)が死亡したコーヒー毒殺事件で、殺人罪で起訴されたジェシカ・クマラ・ウォンソ被告(27)の第14回公判が25日、中央ジャカルタ地裁で開かれた。ミルナさんが飲んだコーヒーに入っていたシアン化合物を分析・実証実験した毒物の専門家が証人として召喚された。
証人はバリ州のウダヤナ大学の毒物の専門家イ・マデ・アグス・ゲルゲル・ウィラスタさんで、事件が発生したカフェ「オリビエ」で事件当日と同じ方法でコーヒーを入れてもらい、それぞれシアン化合物を入れるタイミングをずらした6種類の毒入りコーヒーを作り、定員に香りをかいでもらう実験を行い、検証結果を証言した。
アイス・ベトナムコーヒーは、空のグラスに氷、ミルクを入れ、コーヒー粉末入りのフィルターを設置し、最後にお湯を注ぐという順番で作られる。空のグラスにシアン化合物を入れてから残りの材料を入れて作ったものは、全員がほとんどコーヒー以外の香りを感じなかった。ミルクの後に入れて作ったものは、店員全員が刺激臭を感じた。
コーヒー粉末にシアン化合物を入れてお湯を注いだ場合は刺激臭が広がり、みな避難した。お湯にシアン化合物を入れてコーヒー粉末に注いだ場合はカフェ中に刺激臭が広がり、実験を中止せざるを得なかった。最後にグラスにコーヒーを入れ終わってからシアン化合物を入れた場合は、少し刺激臭がした。
マデさんは毒を入れることができた人物は、ジェシカ被告とバリスタのランガ・ドウィ・サプトラさん、コーヒーを被告の席まで運びコーヒーのお湯を注いだアグス・トリヨノさんの3人だと説明。検証結果から、アグスさんについて、毒を入れていないと証言。「もし毒の入ったお湯を注いでいたら、周囲の人も気分が悪くなっていたはずだ」と説明した。
マデさんは監視カメラ(CCTV)を分析した専門家とも協力。ジェシカ被告の席に運ばれたコーヒーが、被告が用意した紙袋でカメラに映らなくなった前後では、ミルクとコーヒーの2層の色だったコーヒーが、すでに混ぜられた状態の色に変化していたことから、ジェシカ被告が毒を入れた可能性があると主張した。
これに対し弁護側は異議を唱えた。マデさんが公開したシアン化合物入りコーヒーの写真では、色の濃淡はあるものの、いわゆるコーヒーの色だった。これまでの公判では店員のほとんどが、ミルナさんが飲んだ毒入りコーヒーは黄色だったと証言している。オットー弁護士はマデさんに「何色か説明してくれ」「黄色ではないでしょう?」と何度も質問。マデさんは「ミルクチョコレートのような色です」と答えた。(毛利春香、写真も)