トバ湖養殖場を整備 北スマトラ州 アジアのモナコに
観光開発が進む北スマトラ州トバ湖の魚養殖場を整備する計画が動き出す。同州はトバ湖から景観上問題となる養殖場をなくし、フランス南部のモナコ公国のような美しい景観を目指すとしている。養殖を営む企業からは、観光地の一部として養殖場を使用する案が出ているほか、強制撤去されるのでは、と不安視する声も上がっている。
北スマトラ州のハスバン・リトンガ行政担当は23日、中央政府に整備計画を報告する。トバ湖周辺の七つの県と市は25日、養殖場整備に向けた協定を中央政府と結ぶ予定。ハスバン氏は「政府が進めるトバ湖観光開発の一助となる。養殖場が湖からなくなれば、アジアのモナコと呼ばれるようになる」と自信をのぞかせた。計画では2年以内の整備を目指すという。
畜産・水産会社ジャプファ・コンフィード・インドネシア(JAPFA)子会社のスリ・タニ・プムカ(STP)は、北スマトラ州シマルングン県でテラピアの養殖業を営む。自然に優しい形で養殖業を発展させ、施設の見学や環境学習を目玉にした観光地化としての再整備を指針に掲げた。
ことし5月、同県ハランガオル村のトバ湖の湖畔の魚養殖場で約1200トンもの養殖魚が死んだ。被害は数十億ルピアに上ったとされる。養殖されていたのはニラやムジャイルと呼ばれるテラピアの一種で、アフリカやインドが原産で東南アジアでもよく食べられている。地元メディアでは、湖面に浮かんだ大量の死骸の写真や映像が映し出されたため、トバ湖の観光産業は打撃を受けた。
スイス系の魚養殖企業に働くルディ・ヘルタントさんは、英字紙ジャカルタポストの取材に対し「これまでトバ湖から養殖場をなくす計画は知らされていない」と話す。1998年から事業を始め、従業員は約1500人いるが、強制撤去が実行されれば、全従業員が路頭に迷うと不安を吐露。ルディさんは「モナコのようにとの方針は支持している。しかし養殖産業をなくす方法は望まない」と語った。
トバ湖は周囲が100キロある東南アジア最大の湖。世界最大のカルデラ湖でもあり、最大水深は500メートルを超える。観光省はトバ湖を観光開発を推進する国内10の重点地域の一つに指定。10億ドルを投資し、100万人の観光客が訪れるようにするための計画を順次実行していく。(中島昭浩)