中国漁船摘発を「合法」 国内海域で違法漁業 ナトゥナ諸島冲
南シナ海のリアウ諸島州ナトゥナ諸島冲で海軍が17日に中国漁船を拿捕(だほ)したことが、両国の海域をめぐる問題につながっている。中国外務省は、海軍が中国漁船を拿捕したことや拿捕時に負傷者を出すなどの武力行使があったと抗議。これに対し、レトノ・マルスディ外相ら関係閣僚は、拿捕した場所は国際法に基づきインドネシアの海域と説明し、国際法に反する武力行為は行っていないと強調した。
海軍は21日に会見を開き、中国漁船とのやり取りの経緯を説明。ナトゥナ諸島沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)内で17日に中国船が操業していたため、海軍が警告。中国船は警告を無視したため、海軍が威嚇射撃し中国人7人を拘束した。操業していた12隻のうち、11隻はまだ網を張っていなかったために逃げられ、1隻はすでに網を張り漁をしていたためすぐに逃げることができず、拿捕したと説明した。
中国外務省は、発砲で船員1人が負傷したと発表し、「中国漁民の伝統的な漁場」としたうえで、インドネシア海軍の武力行使は「国際法に違反する」と強調した。
インドネシアと中国はともに現場の海域を自国の海域と主張。インドネシア側は中国人の船員7人に1人もけが人はいなかったことを確認していると強調した。
レトノ外相は20日、国会第1委員会(外交・国防・情報)で中国船が違法操業していた場所は、インドネシアの海域であると説明。スシ・プジアストゥティ海洋水産相も中国政府が抗議してきたことに対し、「われわれも中国漁船の違法行為に我慢できない」と強調した。同相は以前に「現場の海域はタイでもベトナムでも中国でもなく、インドネシアの海域だ」としている。
ルフット・パンジャイタン政治・法務・治安調整相は20日、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領と会談し、国際法の専門チームを設立し、中国の違法漁業に対処する方針を伝えた。大統領もインドネシアの海域を守ることについて同意しているとした。ルフット調整相は「ナトゥナ諸島冲をめぐる問題でイ中間の関係が悪化しないように努める」とも話した。
ナトゥナ諸島冲では、ことしに入ってから中国漁船が操業しているところをインドネシア海軍などが複数回摘発してきている。3月には摘発した中国漁船を別の大型中国船により奪還されるなどの衝突が起きており、政府は対応を強める声明を出している。
現在国防省予算は100兆ルピアほどだが、ジョコウィ大統領は国内総生産(GDP)比で1.5%にあたる250兆ルピアまで増やし軍備を増強する考えを示しているほか、ナトゥナ諸島に駐留する兵を増員する計画を掲げる。
最近の主要な海域問題では、2002年に東カリマンタン州とマレーシア・サバ州の国境線上に浮かぶシパダン、リギタン両島の領有権問題が起きた際、国際司法裁判所がマレーシアに領有権があると判決を下した事例がある。(佐藤拓也)