取り締まり、やりすぎ 市民の声が政府動かす ラマダン
バンテン州セラン市チムンチャン郡タングル村のチクプ通りに、サエニさん(53)が切り盛りするワルン(屋台)がある。サエニさんはラマダン(断食月)に入ると、毎日午前10時から食事の準備をしていた。ブカ・プアサ(1日の断食明け)用に客に提供するためで、店のガラス窓をカーテンで覆い、断食中のムスリムのため配慮をしていたという。事件が起きたのは8日午後0時半過ぎだった。
市の警備隊が訪れ、店の閉鎖を要請した。この地域ではラマダン中、毎日午後4時までは飲食店の開店を禁じている。サエニさんは食事を提供していたわけではなく、調理していただけだった。だが、警備隊は市の通達にそぐわないとして、調理済みの食事や食材などを持ち去った。
泣き叫ぶサエニさんの姿がコンパスTVで報道されると、SNSなどインターネット上でサエニさんの窮状が次々伝えられた。サエニさんは体調を崩した。コンパスTVの報道を見た視聴者から「サエニさんがかわいそうだ」などと声が上がり、サエニさんを支援するだけでなく、セラン市ではほかにも店を閉鎖させられた飲食店経営者らがいたことから、被害店主らを応援する資金集めも始まった。資金は市民が所有するツイッターで募り、12日に2億6500万ルピアに達したところで締め切ったという。
また、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領も呼びかけに応えた。12日、サエニさんに対し1000万ルピアの支援金を送った。
サエニさんは店の閉鎖で約60万ルピア分の食材費を失ったという。サエニさんは「ジョコウィ大統領、本当にありがとう」と感謝の気持ちを報道陣に語っている。
ルフット・パンジャイタン政治・法務・治安調整相は13日、今回の騒動を受けて、ラマダン時にはワルンや飲食店が日中に営業や開店準備をしていても、取り締まりは実施しないと発表した。(山本康行)