70万年前には小型化 フローレス原人 国際調査チーム ジャワ原人が進化か

 身長約105センチの小型原人「ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)」が生息していた東ヌサトゥンガラ州フローレス島で、少なくとも70万年前には小型化が起こっていたことが明らかになった。これまでどのように小型化したのかが謎とされていたが、原人がフローレス島に渡来したと推測される約100万年前から30万年間で、矮小(わいしょう)化がほぼ完成していたことがうかがえる。さらにジャワ原人が小さく進化した可能性も高まった。 

 日本の国立科学博物館やオーストラリアのウーロンゴン大学、インドネシアの地質博物館らからなる共同の国際調査チームが9日、明らかにした。
 「ホビット」の愛称を持つフローレス原人は、フローレス島リアン・ブア洞窟で2003年に10万〜6万年前の地層から発見された小型のヒトの骨の化石。今回はリアン・ブア洞窟から約75キロ離れたソア盆地のマタ・メンゲで14年に発掘された化石を研究した。成人の下顎骨(かがくこつ)1点と永久歯4本、乳歯2本の少なくとも3個体に属する化石で、約70万年前のものであることがわかった。
 170万年前以降のアフリカやアジアにいた原人や旧人の身長は180〜160センチと大型なのに比べ、フローレス原人は極端に小さい。ソア盆地で見つかった化石は、猿人(アフリカ、約330万年前)やハビリス原人(アフリカ、約200万年前)、初期のジャワ原人(ジャワ島、約100万年前)、北京原人(中国、約75万年前)、フローレス原人、現代人(ホモ・サピエンス)などと比較。歯と下顎の大きさは、フローレス原人と同等、あるいはやや小さいことがわかった。
 さらに下顎大臼歯は進化前の原始的な状態で初期のジャワ原人と、下顎骨はジャワ原人とフローレス原人と似ていたことから、約70万年前のソア盆地の原人がフローレス原人の祖先である可能性が極めて高いという。
 また初期のジャワ原人ともよく似ていることから、ジャワ原人が約100万年前にフローレス島に移動した後、進化してフローレス原人になったと考えられる。フローレス原人は祖先の原人と比べ、身長は3分の2、脳の大きさは約半分にまで小型化している。

■島嶼化と航海の謎
 フローレス島では孤立した島など特殊な環境で大型の動物が小型化し、小型の動物が大型化する「島嶼化(とうしょか)」が起こったとされており、小型のゾウや巨大なハゲコウなどの化石が見つかっている。  国立科学博物館の人類研究部人類史研究グループ長の海部陽介さんによると、大型の肉食哺乳類などの強力な外敵がいなかったことが小型化の主因の一つに挙げられるという。
 ソア盆地では100万〜70万年前の石器が見つかっていたことから、100万年前に人類がいたことは明らかだが、見つかっている人類の化石は14年に発見された70万年前の化石のみだという。
 海部さんは「70万年前より古い人類の素性については議論の余地がある」と説明する。さらに「海を渡らなければフローレス島には行けないが、どうやって渡ったのか、意図的だったのか、偶然の事故だったのか、わかっていない」と語る。
 ソア盆地の原人の化石はフローレス原人に分類できると考えられるが、結論付けるには頭蓋骨(ずがいこつ)などの化石が発見される必要がある。一方、今回の研究結果からフローレス原人が成長障害を負った現代人であるという仮説は明確に否定した。(毛利春香)

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