中国語飛び交う事務所 6月にも許認可取得 高速鉄道の狙い【上】

 中国とインドネシアの企業連合による合弁会社、高速鉄道インドネシア・中国(KCIC)が1月に起工したジャカルタ〜バンドン間の高速鉄道。建設の遅れや実現性を疑問視する声が上がる一方で、KCICは高速鉄道の広報活動に取り組み、壮大な計画を周知している。予定する駅周辺で1200ヘクタールを超える都市開発計画のほか、スマラン、スラバヤへの延伸計画、高速鉄道を活用する多方面での協業も模索する。KCICの狙いを追った。

 KCICはインドネシアの国営企業4社と中国企業5社で構成される。インドネシア4社の中で出資額が最大なのが、ウィカの略称で知られる国営建設ウィジャヤ・カルヤ。現在KCICの社員約70人のうち約4分の1がウィカからの出向者だ。
 東ジャカルタのチャワンにあるウィカの本社と道路を隔てた反対側のルコ(店舗)にKCIC事務所が入居している。中に入ると、テーブルには中国語の新聞が陳列されている。会話は中国語が飛び交い、KCICと知らなければ、中国の会社と誰もが思うだろう。
 政府が大統領令を発令し、高速鉄道の建設を後押ししていた矢先、関係者が逮捕される事件が起こった。

■無許可で逮捕
 現在KCICが高速鉄道の建設許認可を取得しているのは、1月に起工式を開いた西バンドンに建設予定のワリニ駅付近の5キロ。企業連合の国営農園企業が所有している地域で、許認可の取得作業が容易だった場所だ。ほかの区間の許認可取得作業は滞っている。
 KCICは、許認可の必要のない地質調査作業を続けていた4月下旬、東ジャカルタ・ハリムの空軍所有地で無許可に掘削作業をしていたとして、作業員が逮捕された。
 逮捕されたのは、KCICと地質調査で提携していたゲオ・セントラル・マイニング社や委託会社の中国人作業員など。KCICが地質調査のために提携しているのは、ゲオ・セントラル・マイニング以外にバンドン工科大学(ITB)やウィカの地質調査機関、中国企業の地質調査会社など。地質調査は西ジャワ州カラワン県など各地で実施している。
 KCICは逮捕者の出たハリム駅の地質調査について、ゲオ・セントラル・マイニングではない会社に委託しており、ゲオ・セントラル・マイニングにはハリム駅で許可を出していなかったとし、同社の独断という形で収束した。
 KCIC広報担当者は、許認可に必要な設計計画の資料はすべて5月上旬までに運輸省に提出済みで、6月ごろをめどに許認可を取得、工事を始めるとした。

■展示会で広報
 5〜7日に国際展示場(JIエキスポ)で開かれた「インドネシア・投資ウイーク」。地方の産品や観光地を紹介する展示会で、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領、ユスフ・カラ副大統領がそれぞれ訪れ、現政権の地方開発重視を強調する場となった。
 その中でひと際大きなブースを構えたのがKCICだ。各地方自治体などがブースを構えるなか、最も目立つ場所にブースを設置した。ほかの中国企業のブースも設置され、会場には中国人の姿が多く見られた。
 自ら広報活動に取り組んでいたKCICのハンゴロ・ブディ・ウィラヤワン社長は「投資家や、建設地域付近に生活する地元の住民へのプロモーションが重要になってくる」とし、1日中訪問者と懇談、高速鉄道の必要性を紹介していた。
 日本メディアと言い、秘書に取材を申し込むと、奥にいたハンゴロ社長は顔を曇らせ、1度は取材を断られた。KCICのパンフレットをみると、壮大な事業計画のほかに、中国案と日本案とみられる計画を比較し、中国案の正当性を強調する内容が盛り込まれていた。(佐藤拓也、写真も)(つづく)

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