イオン開店1周年 来客数年間1200万人 庶民にも手応え 「寿司ゴレン」開発 建設中のニュータウン取り込みへ
東南アジア最大規模のイオンモール1号店が開店1年を迎える。当初は日系の「高級」モールというイメージがあったが、価格を下げる週末の朝市や会員割引などを取り入れ、高級なイメージを払拭。郊外の新興開発地区にもかかわらず、1年間で来客数1200万人に達する見込みだ。イオン・インドネシアの菓子豊文社長に、これまでの1年間と今後の展望を聞いた。
東南アジア地域で、初出店が都心ではなく、郊外なのはインドネシアが初めてで、集客に不安はあった。当初は富裕層の来客が目立っており、日系の高級モールというイメージを変えることに力を入れた。
1回の食事にかかる金額を10万ルピア以下に抑え、主婦層の取り込みを図った。調理行程が目で見える総菜売り場では寿司、天ぷら、たこ焼きなどが人気を集める。特に寿司については「世界のイオンで1番売れている」と力説する。高級品だった寿司を個別に販売し、「お手頃感」を強調した。商品開発にも工夫を凝らしている。
ある日、普段輸入している取引先のサーモンが品切れで他業者から輸入したが、従来の味がでなかった。インドネシア人の商品開発担当者から火を通す提案を受け、あぶりサーモンを店頭に並べた。その後も担当者の「巻き寿司を軽く揚げてみては」との提案を商品化するとたちまち評判に。今では売れ筋上位に入る人気商品となった。「寿司まで揚げたものが好まれるとは」と語る。
生鮮食品や果物も当初の想定より人気がある分野の一つ。他店より早く、旬なものを店頭に並べることを徹底。ブルーベリーは美容意識からか「日本よりも売れている」手応えを感じている。
生鮮食品などの食材を購入する主婦層を呼び込むため、9月から週末に朝市を始めた。「市場で購入するより新鮮で清潔、そして値段も安い」を掲げた朝市は好評で、近隣に住む固定客の獲得につながり始めた。
メンバーカードの会員数は10万人に達する勢いだ。ポイントを貯めて還元するシンプルな仕組み。9月からは、毎月最終日曜に一部商品を除いて5%の割引を実施。すると「ワルン(屋台)などの店主がトラックに乗ってカップラーメンやしょうゆなどを買いだめするお客さんもいる」ほど価格の面で他社との差別化につながった。開店当初はムスリムではない人が多かったが、今では幅広い層が来店する。
課題は、好調な食料品コーナーの顧客を上階につなげること。2階衣料品コーナーの「軽井沢シャツ」は日本よりも安価な価格でオーダーできる。軽井沢シャツを運営するフレックスは、本来日本のイオンに向けて生産、輸出していた取引先だ。軽井沢シャツに限らず人件費や輸送費など地の利を生かし、日本での販売価格よりも抑えた商品は他にも多い。
当初目標にしていた年間1200万人の来店客数は達成を視野に入れる。駐車場は500台分を増設、現在3千台が駐車でき、待ち時間の問題を解消、来年は来客20%増を目指す。週末は1日に5万〜6万人で、祝日には7万人を超える日もある。逆に平日は2万人にとどまる来店客数を常時3万人以上まで増やしたい考えだ。
平日の集客が課題と話すなか、中期的には着実に進む近隣のニュータウン開発計画を視野に入れる。イオンを出て外を見渡すとあちこちにクレーンが稼働している風景が広がる。ユニリーバのインドネシア現地法人が2017年に中央ジャカルタの本社機能をBSDシティに移転するなど、開発が進むにつれ、近隣の客層も増える。「3年も経てば平日の来客はさらに伸びる」と見込む。
イオンが中期経営計画(2014年度〜16年度)で東南アジアへの本格展開を目指す鍵となるプライベートブランド。マレーシアなどに比べて食品に関する輸入規制の厳しいインドネシアでは、食に関するプライベートブランド商品は100品にも満たない。「全体の売り上げに占める割合は小さいが、確実に人気がある」とほかの輸入品に比べて安価に購入できる点が消費者を引き寄せている。今後の展開として、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域向けの共通商品を開発しており、チョコレートや飲料品などをマレーシア、ベトナム、タイなどから輸入する。
「売り場がきれいで高そうに見えて近寄りがたい」「6月には2階の衣料品コーナーにカフェを作り、ひと休みする場所を作る」「週末には、パプア州ジャヤプラから日本のモールを見に来てくれるお客さんもいる。日本の魅力をいかに伝えるか、われわれの使命だと思っています」
イオン2年目の挑戦が始まる。(佐藤拓也、写真も)