アジアの大航海を再発見 マジャパヒト号が出航 1カ月かけ沖縄へ
日イ親善友好の証として日本まで旅をする木造帆船「スピリット・オブ・マジャパヒト号」が11日午後、北ジャカルタのアンチョール・マリーナ埠頭から日本へ向けて出航した。西カリマンタン州ポンティアナックとブルネイ、マニラ、高雄を経由し、1カ月後に沖縄県那覇に到着する予定だ。その後も船で鹿児島県と大分県、大阪府、東京に移動する。乗組員はインドネシア人9人と指南役として同乗する海洋冒険家の山本良行さん(67)の10人で、日本を目指して大海原へ繰り出した。
同日出航を祝う式典が船上で開かれ、サフリ・ブルハヌディン海事調整副大臣や航海を企画したインドネシア・マジャパヒト・コミュニティの高城芳秋財務担当が出席したほか、海洋水産省や港長、メディア関係者ら約50人が集まった。
サフリ副大臣は「今日は新しい歴史の日だ。マジャパヒト王国から琉球王国へは9回、使節団を送ったという歴史が残っている。昔とほとんど変わらない状況での航海となるが、船はすばらしい出来だ。安全を大切に、勇気をもって旅をしてほしい」と呼びかけた。帰国後には乗組員がジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領と面会し、航海について報告する場も設ける予定だという。
船は東ジャワ州マドゥラ島の船職人が作った全長20メートル、幅4メートルの木造帆船。13〜16世紀に栄えたヒンドゥー教国家のマジャパヒト王朝は、インドネシアで強大な海軍力を持っていた王朝で、海洋国家を象徴する船を使った文化交流で日イのつながりを強固にできればとの思いで始まった。
2010年にも同じ船で日イの乗組員14人が出航したが、台風でマニラから引き返した。翌年は東日本大震災が発生。再出発までに約6年を要した。
山本さんは、アジア人が木造の船で航海した交通網「海のシルクロード」があったように、かつてアジアにも大航海時代があったが、その後、ヨーロッパ諸国のアジア進出と共に大航海時代はヨーロッパ諸国に取って代わられたと話す。
「アジアの大航海時代を再発見したい。さらにマジャパヒト号をきっかけに、インドネシアのことをよく知らない日本へインドネシアのことを伝えたい。互いを知るには、まず文化や歴史を知ってもらうことが基本。日イを近づける一助となってほしい」と意気込みを語った。
式典ではマジャパヒト王朝の伝統にならい、航海の無事を祈ってシャンパンの代わりに聖水と花の入ったつぼを船体にあてて割った。一度できれいに割れて花が散らばり「幸先が良い」と出席者全員が航海に期待し、無事を祈った。(毛利春香、写真も)