太古の日イ交易たどる 乗員10人で6140キロ マジャパヒト号出航へ
13世紀末から16世紀初めにかけて、ジャワを中心に栄華を極めたヒンドゥー王朝、マジャパヒト王国時代の帆船を再現した「スピリット・オブ・マジャパヒト号」が9日、北ジャカルタのアンチョール・マリーナ埠頭から日本へ向けて出航する。ブルネイやフィリピン、台湾を経由し、東京までの直線距離約6140キロを、乗員10人で約2カ月間航海。太古から日イの交易があったことを実証し、海洋国家同士のさらなる友好を促進する。
航海を企画したインドネシア・マジャパヒト・コミュニティの高城芳秋財務担当(65)によると、帆船は、東ジャワ州マドゥラ島の船大工が現地のチーク材でくぎを一切使わない当時の製法で建造した。
全長20メートル、幅4メートル。中部ジャワ州マグランの世界遺産ボロブドゥールに同帆船を描いたレリーフが残っており、デザインの参考にした。通常の帆船と異なり、帆を斜めに取り付けることが特徴の一つだという。
航海は2010年7月に企画され、ジャカルタから出航したが、途中で台風に遭遇し、航海を断念した経緯がある。乗組員インドネシア人9人に帆船の操縦などを指南し、自身も同乗する海洋冒険家の山本良行さん(67)は「天候は問題ない」と語った。
帆船は、北ジャカルタのアンチョール・マリーナ埠頭を9日午前11時に出航予定。西カリマンタン州ポンティアナックやブルネイ、フィリピン・マニラ、台湾高雄市、那覇、別府、大阪、東京に停泊する。高城さんは「沖縄までは1カ月ほどで到着する予定」と話した。
■「大きな勇気」
中央ジャカルタの海事調整省で2日、乗組員や関係者が出席し出港式典が開かれた。リザル・ラムリ海事調整相は「13世紀当時の航海を実現し、私たちに大きな勇気を与えるもの。日本の支援や協力に感謝している。海洋国家としてのインドネシアを再認識させ、文化の変遷に対する新しい見方を養ってほしい」とあいさつした。
谷崎泰明・駐インドネシア日本大使は「海洋国家としての二国間関係を促進させるもの。昨年の日イ首脳会談でも海洋分野での相互協力推進で合意。日本人は混血人種。私たちのルーツが南方からも来ているという説を証明する一助となる。両国への関心が高まることを期待し、航海の無事を祈っている」と述べた。(中島昭浩、写真も)