不動産トップ聴取 人工島汚職でKPK アホック知事側近も
ジャカルタ湾に造成中の人工島の建設事業に絡む贈収賄事件で、汚職撲滅委員会(KPK)は13日、大手不動産開発業者トップとアホック・ジャカルタ特別州知事の側近を事情聴取した。事業の裏交渉をめぐり、スハルト政権当時から政商として名を馳せた開発業者とアホック知事の関係にも注目が集まっている。
KPKが聴取したのは、州政府が事業許可を発行した人工島計17島のうち、最大の5島(計1331ヘクタール)を受注した大手不動産アグン・スダユ・グループのスギアント・クスマ(通称アグアン)会長と、アホック知事の政治コンサルタントを務めるスニ・タヌウィジャヤ氏。
事業に関する条例案審議で、スギアント氏は州政府や州議会に対し、不動産の評価額に課す税率を州政府案の15%から5%に引き下げるよう要求。これと引き換えに賄賂を複数の議員に渡したとみられる。
KPKは先月末、州議会のサヌシD委員会副委員長(グリンドラ党)を収賄容疑で現行犯逮捕。他の議員からは条例案可決のためにスギアント氏から「前金1億ルピアを約束された」との証言も出ている。贈収賄発覚で先週予定されていた条例案承認は延期された。
裏交渉では複数の議員だけでなく、アホック知事の側近であるスニ氏の関与も浮上した。スニ氏がスギアント氏に対し「最終的に知事が税率引き下げを承諾した」と伝えた、と議員が証言したため、KPKはスニ氏に海外渡航禁止処分を下し、スギアント氏とアホック氏との間で繰り広げられた交渉の経緯を調べている。
■財閥と親しい院生
アホック知事と大手不動産トップの間を取り持つスニ氏とは何者か――。アホック知事は「州職員ではない。私についての論文を執筆するために調査している米ノーザンイリノイ大学の博士課程の大学院生」と説明する。
地元メディアによると、国際戦略研究所(CSIS)調査員などを務めた後、2012年知事選の選対チームのメンバーとしてジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領とペアを組んだ副知事候補、アホック氏のスケジュール管理を担当した。大手財閥シナール・マス創立者のエカ・チプタ・ウィジャヤ氏の親族でもあり、「リッポー・グループやラジャワリ・グループの幹部と仕事をしていたことがある」(アホック氏)という。
スギアント氏について、アホック氏は「月に1回は話し合う仲」「家も近所」と親密な関係であることを認めているが、人工島の開発業者の義務について「スニ氏を交えて議論してきた」と説明。条例案審議の最終局面で税率引き下げを認めたとの疑いは否定している。(配島克彦)