通説覆す5万年前 フローレス原人絶滅 現生人類が淘汰か 調査チームが新説発表
東ヌサトゥンガラ州フローレス島リアン・ブア洞窟で2003年に発見された小型のヒトの化石「ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)」について、推定年代が10万〜6万年前、絶滅は通説の1万2千年前ではなく約5万年前とする新説が発表された。現代人と同じホモ・サピエンス(現生人類)がオーストラリアや東南アジアに到達したのが約5万年前。現生人類によって絶滅に追い込まれた可能性も浮上している。
オーストラリアのウーロンゴン大学とインドネシアの国立考古学研究センター、米国スミソニアン博物館などの調査チームが30日、明らかにした。
フローレス原人が発見された当初は、頭蓋骨や腕の骨などから1万8千年前、周りの地層が9万5千〜1万2千年前のものであったと推定され、約1万2千年前には絶滅したとされていた。そのため、5万年前に同地周辺に到達したとされる現生人類と4万年もの間、どのように共存していたのかがこれまで大きな謎とされていた。
調査チームは2007〜14年に発掘を続け、リアン・ブア洞窟の解明に挑んできた。初めにフローレス原人が発掘された洞窟の東側の壁と、7万4千年前と推定される洞窟中央の地層が非常に似ていることがわかった。さらに発掘範囲を広げるうちに、古い地層の上を約2万年前などの比較的新しい地層が覆っていることが発覚。フローレス原人が使用していた最も新しいものとして5万年前の石器が発見され、絶滅した時期を特定する要因の一つになった。
これにより5万年前ごろにフローレス島に到達した現生人類が、フローレス原人を淘汰した可能性が新たに浮上した。調査チームのトーマス・スティクナ氏は「実際にフローレス原人と現生人類が遭遇していたかどうかはわかっていない。さらなる研究が必要」と話す。
同洞窟の5万年前の地層からは、巨大なアフリカハゲコウやコモドドラゴン、小型のゾウ「ピグミー・ステゴドン」などの化石も見つかっているが、同時期になぜ絶滅したのかも不明のままだ。
10年にはフローレス島で約100万年前の剥片石器などが見つかったことから、フローレス原人の祖先と思われる人種が生活していたという調査結果も明らかにされた。
一方、フローレス原人については未だ謎が多い。新種説のほか、現生人類が病気などで変形した種だとする意見や、100万年前にジャワ島にたどり着いたとされるジャワ原人が小型化した可能性など、今でも研究者や専門家の間で論争が続いている。(毛利春香)
◇ フローレス原人 2003年にフローレス島リアン・ブア洞窟で発掘され、新たなヒト属としてホモ・フローレシエンシスと名付けられた。化石はメスで、成人にもかかわらず体長1メートル、体重25キロと小さく、脳の大きさはグレープフルーツ大、またはチンパンジーとほぼ同じ。「ホビット」の愛称を持つ。