【アルンアルン】民族の多様性と人口センサス
インドネシアに関心をお持ちの方であれば「多様性の中の統一」という国是を何度も耳にしているだろう。最近では主に宗教の多様性や寛容性が国内外で注目されるインドネシアだが、民族もまたこの国の多様性を彩る重要な要素の一つである。では具体的にインドネシアの民族はどれほど多様なのだろうか。
実はインドネシアにおける民族構成に関する統計の蓄積はあまりなく、2000年の人口センサスで独立後初めて民族に関する質問が登場した。植民地時代から民族構成の統計を続けているマレーシアやシンガポールと比べるとインドネシアはまだ始まったばかりと言える。
さて、00年の人口センサスに盛り込まれた民族に関する質問は自己申告形式で行われたために千以上もの民族名が回答にあがった。同じ多民族国家でもマレーシアやシンガポールのようにマレー系、中国系、インド系の三つが主な構成民族である近隣諸国とはその様相の違いが顕著に表れている。
こうした事情から、インドネシア全体ではジャワ、スンダ・プリアンガン、マドゥラ、ミナンカバウ、ブタウィなど最も多かった上位八つの民族のみを、各州の統計でもそれぞれ上位八つの民族の人口数を公表し、それ以外は「その他」に含めた。州によっては全体の統計で登場しなかった民族名が上位を占める地域もある一方で、多くのダヤック系民族が暮らす西カリマンタン州などではその他が圧倒的に多い結果となった。
続く10年の人口センサスでは、カロ・バタックやトバ・バタックは「バタック」として一つの民族カテゴリーにするなど同系統のグループを集約させたほか、100万人以上か否かを基準に独立した民族カテゴリーを作り、それに満たない場合は地理的に隣接する民族と合わせて計上している。例えば400以上あるニューギニア島の民族は全て「パプアの民族」としてまとめられた。
こうした方式のもと10年では外国出身者枠も含めて全部で31の民族カテゴリーを設けて集計を行い、ジャワ、スンダ、バタック、その他のスラウェシの民族、マドゥラの順で最も多い結果となった。4番目にある「その他のスラウェシの民族」とはマカッサル、ブギス、ミナハサ、ゴロンタロ以外のスラウェシ島に暮らす200以上の民族がまとめられたカテゴリーである。
このように、インドネシアでは人口センサスの実施・集計自体がその多様性から大きな影響を受けており、管轄する中央統計庁の試行錯誤は続くと思われる。今後、民族に関する統計が蓄積されることを期待したい。(JETROアジア経済研究所図書館研究情報整備課・土佐 美菜実)