新港湾 パティンバン最有力 西ジャワ州 チラマヤ代替地 事前調査完了 19年開業目指す
昨年中止された西ジャワ州チラマヤ新港の代替地について、政府は西ジャワ州スバン県パティンバンにする方向で最終調整していることが、運輸省幹部への取材でわかった。同省は昨年12月にパティンバンの事前調査を終えており、今後実現可能性の調査や環境に対する影響調査を進め、2017年着工、19年に港湾の一部開業を目指す計画を策定している。
運輸省海運総局のモーリツ・シバラニ港湾局長は「パティンバン港の案については、ジョナン運輸相が承認済み」と語り、同港をチラマヤの代替港として進める公算が高いとみられる。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が最終的に決める。
パティンバンはチラマヤ港の予定地だった場所から東に50キロほどのところに位置する。建設予定地には、海運総局が保有する小さな港湾がある。
地元のコンサルタント会社ラヤ・サーベリンドが昨年7月に調査を開始。調査費は15年国家予算からねん出した。
サーベリンド社と運輸省がまとめた現時点の資料によると工期を3期に分け、まず19年に一部開業を目指す。開業時の港湾容量は20フィートコンテナ(TEU)換算で年間25万個。その後27年に年間273万4千個、37年には750万個に達する計画で、チラマヤ港の計画とほぼ同規模となる。
港湾の建設費は43兆ルピア(約30億9千万ドル)。うち融資を受ける割合は約8割の34.9兆ルピア(約25億ドル)で、インドネシア政府が8兆ルピア(5億9千万ドル)ねん出する。融資契約を年内に締結し、17年に着工予定。
運輸省関係者によると、建設業者や金融機関は未定で、方向性が決まり次第各国の政府機関や企業と交渉する予定だ。モーリツ局長は「政府は国際港湾を作りたいが、そのためには他国からの支援が必要」と語り、支援を受ける候補の一つに日本が入っていると述べるにとどめた。
西ジャワ州内の港湾建設案件は、首都圏唯一の主要ターミナルであるタンジュンプリオク港における貨物輸送量の増加を背景に、ユドヨノ前政権当時、日イ両政府がチラマヤ港湾建設を優先事業に位置づけ、調査を進めていた。
しかし昨年4月、国営石油ガス・プルタミナが石油ガスのパイプラインや関連施設があるとして建設地の移動を要求、政府が方針を変え中止を決定した。その後運輸省が代替地の調査を始め、パティンバンを含む西ジャワ州内6カ所を調査対象とし、最適な立地の選定作業をしていた。昨年12月には、訪日したジョナン運輸相が石井啓一国土交通相と会談し、チラマヤ港代替地について協議した。
政府の優先事業に
政府はこのほど19年までのインフラ整備の優先30事業に、チラマヤ代替港湾となる西ジャワ州新港を組み入れ、建設を急ぐ姿勢をみせている。
大手財閥リッポー・グループの創始者モフタル・リアディ氏は、オンラインメディア・ブリタサトゥの取材に「西ジャワ州内に港湾ができれば、タンジュンプリオク港から貨物を分散でき、物流コストを8割以上削減できる」と語り、インドネシアの競争力強化に港湾が不可欠と強調している。
主に工業団地開発などを手がける地元スルヤ・インタルヌサ社は、年内にパティンバン付近に300ヘクタールの土地を購入する方針を明かすなど、企業もパティンバン港を想定した動きをみせている。(佐藤拓也)