「おしん」を再放送 ワクワクジャパンで29日から 主演の小林綾子さん来イ 「貧しくとも心豊かに」
1980年代に世界各地で大ヒットしたNHKの連続テレビ小説「おしん」がインドネシアのお茶の間に帰ってくる――。日本番組専門チャンネル「ワクワクジャパン」は29日から、女性ドラマシリーズの主要作品として放送を開始する。18日には、おしんの少女時代を熱演した小林綾子さんがジャカルタで開かれた記者会見に出席、ドラマの魅力や当時の思い出を振り返った。
小林さんの来イは20年ぶり4度目。中央ジャカルタのプラザスナヤンにある映画館「XXI」内のラウンジで開かれた会見に着物姿で出席し、久しぶりに訪れたインドネシアについて「高い建物や車、バイクが増えて活気があふれている」と印象を語った。
会見では小学生だった撮影当時の苦労話や裏話が次々と飛び出した。小林さんが一番印象に残っているのは、ヒロイン・おしんがいかだに乗り奉公に出る際の母親との別れのシーン。山形県でロケをし、出演者たちをスタッフや地元市民ら100人以上が見守ったという。
いかだを川上に設置したクレーンにつないで固定し、流されないよう撮影。「1月のとても寒い中での撮影だった。今みなさんが『おしん』といえばあのシーンが浮かんでくる。当時はそんな印象的なシーンになるとは思ってもみなかった」と笑顔で振り返った。
おしんは山形の女の子。東京出身の小林さんは方言の習得に苦労したという。「方言の先生から教わり、方言を収録したテープを聞いて勉強した」。インドネシアにはたくさんの言語があると聞いた小林さんは「みなさんには私の気持ちを分かってもらえると思います」と話した。
ドラマの魅力については「おしんのような時代を経て今の日本がある。貧しくとも心豊かに過ごしていくことの大切さがこのドラマの根底にある。インドネシアの人たちにも、家族を大事にする気持ちを振り返るきっかけになれば」と語った。
ワクワクジャパンによると2年前の同チャンネル開局以来、視聴者から「おしんをもう一度見たい」との要望が多数寄せられた。今回はHDアップコンバート版で鮮やかな映像を視聴者に届ける。全297話を1年かけて放送する。
毎週月〜土曜の午後8時から「ドラマ・ウーマン」と題し、「おしん」の放送を皮切りに、女性の生きざまを描いたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」や「ごちそうさん」などを続けて1話ずつ放送。同9、10時の時間帯にもテーマ別に放送していく。
ワクワクジャパンのマーケティング部マーケティング&プロモーションチームの関岡扶嵯子アシスタントマネージャーは「調査結果でインドネシアではドラマが人気だと分かった。午後8時から3時間、テレビをつければ必ずドラマを見られるように改編した。おしんでは高視聴率を目指したい」と意気込みを語った。(山本康行)
◇ おしん 1983〜84年に放送されたNHK連続テレビ小説。山形の寒村に生まれたヒロイン・おしんが、明治から昭和まで80余年の激動の時代を懸命に生きる生涯を描いた人間ドラマ。原作は脚本家の橋田壽賀子さん。少女期を小林綾子さん、青春期から中年期を田中裕子さん、晩年を乙羽信子さんが演じた。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%は日本のテレビドラマ歴代最高記録。世界70カ国以上で放送され、インドネシアでも86年に国営テレビTVRIで初放送。おしんは日本人女性の代名詞となった。その後何度も再放送され、世代を超えて親しまれている。