「庶民目線」で支持拡大 スラバヤ市 新風もっと 圧勝のリスマ氏
9日に行われた地方統一首長選挙の東ジャワ州スラバヤ市長選で、現職のトリ・リスマハリニ(通称リスマ)氏が再選を果たした。米誌フォーチュンの「世界の最も偉大な指導者50人」に選ばれるなど、国内外で注目される敏腕の女性市長は、公園整備など庶民目線の施策で支持を拡大。一方で強行した「売春街」閉鎖などでは議論も巻き起こした。地元市民たちに話を聞いた。
10日夜現在の得票率は86.19%(開票率98.15%)で、まさに圧勝だった。投票が行われた9日、無職のエンダンさん(61)は1年ほど前にバスキ・ラフマット通りで自ら交通整理にあたるリスマ氏を目撃したという。「彼女のようなリーダーはほかにいない」と「庶民派」のリスマ氏に一票を投じた。
リスマ氏は10年以上、スラバヤ市役所の職員としてキャリアを積んできた。市公園清掃局長時代に手掛け、整備を進めたブンクル公園にも投票所が設置された。緑豊かで近代的な公園の裏手には昔ながらのワルンや売店が立ち並ぶ。売店で働くウミさん(50)は「リスマ氏は貧しい人にも目を向け、売店の立ち退きを命じなかった。おかげで4年も店を続けている」と話した。
■閉ざされた売春街
リスマ氏の支持理由で多かったのが、昨年6月に強行した東南アジア最大規模の赤線地帯「ドリー」の閉鎖。大学生のカスブラさん(19)は「スラバヤのイメージが変わった」と話す。
ドリーは現在、看板が取り外され空き家となった宿が立ち並び、その前は子どもたちの遊び場になっていた。9日には板が打ち付けられた施設の前に投票所を設置。投票所での集計によると、同地区の有権者数は484人で投票率は約50%、リスマ氏の得票率は約70%だった。ドリーで生まれ育ったシスワティさん(41)は13歳と7歳の息子の母。自宅の隣が売春施設で「閉鎖されてうれしい」とリスマ氏に投票した。
閉鎖をめぐっては当時、職を失うことになる売春婦やあっせん業者らが強く反発した。ドリーで暮らす印刷業のクレメンスさん(42)は閉鎖について「地元の一部の人たちはまだ怒っている」という。「今後、ドリーの新しいイメージをどのように作っていくのか。リスマ市長の腕にかかっている」と話した。
投票所となった元売春施設の柱には「アイラブドリー」の落書きがあった。投票日当日もリスマ・ウィヌス組の対抗馬、ラシヨ・ルシー組のポスターが貼られたままだった。
地区の再開発や売春婦の再就職など課題は残る。「子どもたちの将来を考えて閉鎖した」と話すリスマ氏は、ドリーでまん延したといわれるエイズ患者のその後に話が及ぶと、表情を変えて口を閉ざした。(スラバヤで木村綾、写真も)