【スナンスナン】 デング熱にご用心 雨期に気をつけたい感染症(上)
ジャカルタでも本格的に雨が降るようになった。南ジャカルタのSOSメディカクリニックで日本語診療に当たるジョハン医師は「雨期の始まりにはデング熱に気を付けて」と訴える。例年10月ごろ感染が増えるが、ことしは雨期入りが遅く、これからが注意が必要という。インドネシアで感染症を防ぐにはどうすれば良いのか。対策を2回に分けて紹介する。
■草むらに注意
雨が降ると、草が生えている場所などに水がたまる。デング熱を媒介する「ネッタイシマカ」はきれいな水を好み、降ったばかりの雨がたまる場所に卵を産み、繁殖する。雨期になるとデング熱の感染が増えやすいのはこのためだ。
屋外では草むらに注意しよう。子どもは庭などの遊び場、大人はゴルフ場などで蚊に刺されやすい。
■正午ごろがピーク
ネッタイシマカは室内にも発生・生息し、室内で過ごす時間が多い乳幼児も刺されやすい。蚊の活動は朝8時ごろに始まり、正午ごろにピークとなるため、赤ちゃんの昼寝の時間には要注意だ。蚊が部屋に入らないよう、窓は網戸を使うか極力開けないようにする。蚊は暗いところを好むため部屋を明るくしておこう。蚊が住みやすいドアの裏に洋服を掛けたりせず、扉付きのクローゼットや引き出しにしまうことを勧める。
■高熱が続いたら受診を
デング熱の潜伏期間は4〜7日間ほど。高熱が2〜5日間続くほか、頭痛や関節痛などの症状を伴う。発病して2、3日すると白血球や血小板の数値が減少し始める。診断は「血液検査で抗原・抗体のチェックが簡単にできます。高熱が続く場合はすぐに検査を」。
■蚊に刺されないこと
ワクチンがないため、大事なのはなるべく蚊に刺されないことだ。蚊が多い草むらなどは避け、外出時には長袖・長ズボンを着用するとともに、虫除けスプレーを使用する。ただし、妊娠中の女性や肌が弱い赤ちゃんは刺激のあるものは避け、使いすぎないようにしよう。
■まれに重症化
ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)医療相談室の伊藤通敏医師は「病原体であるデングウイルスは4種類あり、一つのウイルスタイプに感染しても次に違うタイプのウイルスに感染するとまた発症する」と注意を促す。デング熱になった人の1%ほどが重症化し、デング出血熱やデングショック症候群になるという。血圧が下がり、脱水や出血を伴う危険もある。2回目に感染したウイルスが1回目と異なる型だと血液中の抗体が過剰に反応してまれに重症化する恐れがあり、早めの受診が大切だ。(木村綾)
ダイティア・ジョハン・アガハリ医師 総合内科医。北スマトラ州メダン出身。1986年アトマジャヤ大学医学部卒業後、セントカルロス病院救急内科に勤務。90年に奨学生として富山医科薬科大学付属医院小児科、大阪の国立循環器病研究センターで5年間学ぶ。帰国後、セントカルロス病院に戻り、96年からSOSメディカクリニックの日本語診療医師。
伊藤通敏医師 一般外科医。専門は消化器外科、乳腺外科。神戸市出身。84年京都府立医科大学卒業後、研修医や大学院を経て、京都府内の病院に約13年間勤務。その後、長野県の病院に約10年間勤務し、ことし8月から中央ジャカルタの共愛メディカルサービス内JJC医療相談室勤務。
ネッタイシマカ の発生ポイント
・カーテンの裾
・ベッドの下
・水槽
・植木鉢
・鳥かごの水入れ
・庭の草花
<注意点>
・部屋を明るく
・窓は締め切るか 網戸に
・ドアや壁に服をかけない