ムスリム向け和のテイスト 協会設立から半年 活動の場広げる
日本ムスリムファッション協会(折田真一代表)が設立されて半年が経った。日本のムスリムファッションへの理解を深めながら、インドネシアのムスリムに日本の伝統的素材を使ったファッションを提案、業界との関係作りに動いている。
「インドネシアでは大きな花柄は好まれません」。
ジルバブ(スカーフ)の下につける和柄のインナーなどを生産し、マレーシアやインドネシアでの販売を目指す「ワン・シークレット・ジャパン」(福島県西郷村)の名和淳子代表は9月、西ジャワ州バンドン市のバンドン工科大(ITB)で学生と自社製品について意見交換していた。
名和代表は協会が実施した初めてのインドネシア商談・視察研修旅行に、日本の伝統的素材を使った繊維製品を製造・販売する「ふく紗」(松山市)の伊東信二社長とともに参加した。
視察ではファッション業界と意見交換したほか、製品の委託販売など協力の可能性を探った。名和代表は「同じ東南アジアの国のムスリムなのに、マレーシアとインドネシアでは若者の好みが違って驚いた」と話した。協会は今月にも同様の視察旅行を実施予定だ。
■次々に覚書
協会はこのほど、著名ムスリムファッションデザイナーのイルナ・ムティアラ氏がバンドン市に開校予定の専門学校イスラミック・ファッション・インスティチュートと覚書を締結。お互いの国での講演や学生同士の交流を想定している。今月にはインドネシア・ファッションデザイナー協会(APPMI)とも覚書を結び、来年3月にAPPMIが主催する国内最大級のファッションイベント「インドネシア・ファッションウィーク」にブースを設ける計画だ。折田代表は「地元業界と関係を作り、ファッションを通して両国の文化を伝える懸け橋になりたい」と話す。
日本では海外の文化などを伝えるプラザ神明フェスティバル(東京都港区立神明いきいきプラザなど主催)でムスリムファッションを紹介・体験できるブースを設け、協会の野中葉理事(慶応大学SFC研究所上席所員)がムスリムファッションについての講演を東京の大学でするなど活動の幅を広げている。
■「いいね」1万人
設立から半年が経ち、折田代表は「日本の伝統織物とムスリムファッションの融合に手応えを感じている」という。協会のフェイスブックページに和柄のムスリムファッションの服を着た女性などの写真を投稿したところ、1万人以上の人が好意的な感情を示す「いいね」を押した。反応した多くがインドネシア人やバングラデシュ人で、折田さんは「和柄の服に興味があるムスリム女性はかなり多いのではないか」と話している。
■価格がネック
ただ課題は多い。ふく紗はインドネシア国内15都市で展開する高級ムスリムファッションブランド「シャフィラ」でファッションショーを開く計画があったが、調整が付かなかった。伊東社長によると、日本の伝統織物の素材を使うと1着10万円くらいになり、販売しても多くは売れないとの意見がシャフィラ側から出た。ただふく紗の作る服には期待しているといい、伊東社長は「和の要素を残しながら素材を工夫するなどして、安いものを作りたい」と意気込む。将来的にはバンドンの工場で委託生産し、シャフィラ店舗で販売したい考えだ。
協会の会員は現在4社。まずふく紗が「成功事例」となることが目標で、他社の進出のほか、将来的には他国につなげることを狙う。(堀之内健史)
◇日本ムスリムファッション協会
4月に設立した一般社団法人。イスラムへの理解を深めながら、衰退する日本の伝統織物を使ったムスリムファッションの服をイスラム市場に売り込むことを目指す。まずはインドネシアへの浸透に注力している。