オランウータン追われる 保護区内で森林・泥炭火災 カリマンタン島
森林・泥炭地火災による煙害が8月末からインドネシア各地で深刻化し、生態系の破壊が急速に進んでいる。中でもカリマンタン島には約5万頭のオランウータンが生息しており、すみかを追われる事態が発生している。
カリマンタン島でオランウータンを保護している非政府組織(NGO)「ボルネオ・オランウータン・サバイバル・ファウンデーション(BOSF)」は、森林や泥炭地のうち、ホットスポット(高温地帯)や火災が発生した約30万9000ヘクタールで調査を実施。これまでに火災ですみかを追われたり、煙害で弱ったりしている野生のオランウータン3千頭を保護・診察した。
中部カリマンタン州パランカラヤ郊外にあるオランウータンのリハビリ施設「ニャル・メンテン・オランウータン・センター」では煙害が深刻で、視界が50〜100メートルまで低下する日もある。
同施設で管理しているオランウータン480頭のうち、特に煙害の影響を受けやすいのは抵抗力の弱い子どものオランウータンだ。現在、13頭の子どものオランウータンが室内の施設で専門医による治療を受けながら過ごしている。また野生で生きていけるよう外でリハビリする「フォレスト・スクール」も1日に数時間ほどしか開けないという。
火災以外でも、干ばつの影響で同保護区内と外の住民が住む場所とを隔てるルンガン川の一部が干上がっており、オランウータンが間違って移動しないよう職員が監視している。水不足や森林破壊の影響で、水やエサも毎日運ばなければならないという。
■消火追い付かず
東カリマンタン州バリックパパン市から約35キロの場所にあるオランウータンの保護・リハビリ施設「サンボジャ・レスタリ」ではオランウータン209頭が生活しているが、同地では8月末から森林火災が多発している。
大規模な森林火災は8月31日〜9月1日と9月23日に発生し、施設の敷地1852ヘクタールのうち、250ヘクタールが焼失。樹齢10〜15年の樹木がほとんどで、7万8千本が次々と燃えた。消火後は煙だけでなく、火がくすぶり赤く色を変える木があちこちで見られた。
同州ムラワルマン駐在の陸軍やバリックパパン市の消防局、自然資源保全センター(BKSDA)、州の災害対策局(BPBD)が消火活動に協力しているが、現在も火災が続いており、乾期が続く限り被害の収束は見込めないという。
BOSFのコミュニケーション・オフィサーのニコ・ヘルマヌさんは「毎年インドネシア各地で煙害問題が発生するが、BOSFの保護区内がここまで影響を受けたのは初めて。火を消しても消してもきりがなく、時間単位で交代しながら毎日パトロールを続けるしかない」と話した。(毛利春香)