アジアの若手ジャズ楽団 AYJOが初コンサート
東南アジア5カ国と日本の若手演奏家で結成された「エイジアン・ユース・ジャズ・オーケストラ(AYJO)」(国際交流基金主催、有限会社プラネットアーツ企画制作)が17日、中央ジャカルタのタマン・イスマイル・マルズキ(TIM)のグラハ・バクティ・ブダヤ劇場で初のコンサートを開いた。約840人が入るホールは満席。指揮者の松本治さんが作・編曲したオリジナル12曲を披露し、観客をジャズの世界へ引き込んだ。
楽器ごとのソロ演奏では会場から大きな拍手や歓声があがった。終始、かけ声や手拍子が自然と起こるほど盛り上がり、観客席と一体感のあるコンサートとなった。
松本さんは楽器ごとにメロディーが絡まり合い、演奏者同士が互いに理解し合わなければ演奏できないように作・編曲したという。「一人一人がうまく演奏できることだけに重点を置かず、一生懸命、全員で一緒に努力しないと演奏できない曲に仕上げた」。
ジョクジャカルタ芸術大学(ISI)でクラリネットを学ぶムハマド・ヌル・イクサンさんは、これまでクラシック音楽を演奏してきたが、ジャズを学びたいとオーディションに挑戦した。「楽譜をきちんと読むことや、クラシックとは違い自分の気持ちを音で表現する大切さを学んだ。ここで吸収したジャズ演奏の技術を友人や大学へ還元したい」と話した。
■私たちだけのジャズ
AYJOメンバーは日本とインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシアの28人。家族のように仲が良く、「言葉の壁」も音楽を通じて乗り越えてきた。バリトンサックスの本藤美咲さんは「国内の音楽について詳しく知っていても、それぞれの国で外の音楽を知らない人は多い。出身国が違っても一つにまとまった音楽を演奏できることや、国外には素敵な音楽があることを伝えたい」と話した。
演奏曲にはメンバーが作曲した音楽や各国を表現するメロディーも取り入れており、「自分たちだけのジャズを演奏している」という意識が強いという。サックス奏者でバンドマスターを務める中山拓海さんは「ジャズはアメリカで生まれたが、AYJOではアジアの演奏家ならではのジャズを創り上げてきた。できるだけ多くの人に聴いてもらいたい」と抱負を語った。
指揮と作・編曲を担当した松本さん自身、トロンボーン奏者。初めて海外の楽団で演奏したとき、それまでとは全く違う音楽に対する考えを学んだ経験から、若い演奏家にも同じように経験してほしいとの思いで、AYJOに参加した。「音楽は共通のことば。若手の演奏家らが互いに刺激を受けながら、一つの音楽を創り上げる達成感を味わってほしかった。今後はこの経験をぜひ、後輩へつなげてほしい」
20日午後7時半から、ジョクジャカルタ特別州のインドネシア芸術大学(ISI)コンサートホールで公演する。チケットは無料。予約・問い合わせは国際交流基金(メールpuput@jpf.or.id)まで。
今後はタイなど、メンバー出身国で公演を続ける。(毛利春香、写真も)