住まいが創造空間 芸術家の横内賢太郎さん 交流のギャラリー ジョクジャで公開
ジョクジャカルタのインドネシア芸術大学(ISI)に聴講生として留学している芸術家の横内賢太郎さん(35)が、ギャラリーとスタジオを兼ねた「アーティスト・サポート・プロジェクト(ASP)」を6月、地元に開設した。横内さんが借りている住まいを開放し、地元の芸術家らが制作スタジオと展示スペースとして利用できる。同月には造形作家の廣田緑さんと協力し、初めての展示会も開いた。
横内さんはかねてから日本とインドネシアの芸術家らを紹介したり、作品を展示したりするオープンスペースを開きたいと考えていた。以前はISI近くに住んでいたが、周囲にギャラリーなどが多く、誰でもぶらりと立ち寄りやすいエリアにある家を選び、移った。
ASPは、広さ約3×4メートルの4部屋を展示室として備える。誰もが自由に展示できる空間だ。
住まいを誰もが寄れる憩いの場にするのが主な目的で、横内さんが作品を創作する様子を自由に見学することも可能。また、オープンスタジオとして地元の人や日本人の芸術家を呼んだり、ホームステイしてもらったりする。横内さんは「ジョクジャカルタで新たにいろんな人と交流し、より楽しく生活できると思った」と胸を膨らませる。
■西洋との文化融合
横内さんは、光沢のあるサテン布に染料のメディウムで装飾して絵を描く現代美術家。「装飾という点で手書きのバティックと自分の作品に共通点を感じ、装飾文化にも興味があり、インドネシアで学んでみようと思った」。1年前にジョクジャカルタに来たが、バティックについて学べば学ぶほど時間が足りないと感じたという。
バティックの他に新たに版画も学ぶ。「インドネシアでは最近、版画を学ぶ学生が増えている。チャップと呼ばれるスタンプ方式で作るバティックとの共通点もあり興味深い」と話す。
横内さんは、日本でかつて鎖国していた江戸時代に浮世絵がオランダから入ってきた西洋油絵から刺激を受けたように、西洋の影響を受けながら変わっていくアジアの芸術・美術に興味を持つ。
「文化が融合していく過程が好きで、おもしろい。インドネシアでも植民地時代のバティックの中には、西洋楽器などオランダ文化を取り入れた柄があり、影響がみられる」と横内さん。「オランダから影響を受けたという点は、日本と共通するところ」
今はジョクジャカルタで学んでいるが今後は他国も訪れ、より広い視野でアジア全体の装飾文化や美術について知っていきたいと夢を語る。
ASPの住所はKedai Semilir Jl Parangtritis 163A Yogyakarta(毛利春香)