国際世論と豪の板挟み 条件付きで人道支援継続 続く避難民流入問題
ミャンマーの少数派ロヒンギャ族やバングラデシュ出身者を中心とする避難民の大量流入が続いている問題で、インドネシア、マレーシア両国はこのほど、条件付きで避難民の保護を継続する方針を打ち出した。避難民の多くはインドネシアを経由し、オーストラリアを目指しているが、同国は受け入れを拒否。インドネシア政府は国際世論との間で板挟みになっている。
インドネシアとマレーシア、タイの3カ国は20日、マレーシア・クアラルンプール近郊のプトラジャヤで外相会談を開催。AFP通信などによると、インドネシア、マレーシア両国は避難所を設置するなどの人道支援を継続することで合意した。
ただし両国は現在、公海上を航行している7千人前後の避難民に限って支援を継続する。これまでに受け入れた避難民についても1年以内にミャンマーへの本国送還や第三国への移送を完了させる方針だ。
レトノ・マルスディ外相は会談後、アンタラ通信に対し「(避難民の)出身国や経由国だけでなく、目的国や国際機関とも協調して問題に取り組まなければならない」と述べ、国際社会の協力を求めた。
アルマナタ・ナシル外務省報道官は21日、3カ国会談の合意内容をミャンマー外務省に通達したと発表した。ミャンマー外務省は合意を歓迎したという。同国政府は20日、避難民の大量流出について国際社会と「懸念を共有」しており「人道支援の用意がある」との声明を国営メディアを通じて発表している。
■難民は豪を目指す
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書によると、ロヒンギャ族をはじめ南アジアの難民認定希望者の多くはオーストラリアを目的地とし、経由地のインドネシアを目指してインド洋を渡る。
ただ、オーストラリアのアボット首相は受け入れを拒否する姿勢だ。英紙ガーディアンに「どのような手段であれ対策を講じる用意は全くない」と述べた。
一方で、インドネシアなどに対し避難民の受け入れを求める国際世論が高まっている。潘基文国連事務総長が近隣国に避難民の救助を求めたほか、フランシスコ・ローマ法王もロヒンギャ族とバングラデシュ出身者に言及し、人道状況に懸念を示した。
インドネシア外務省は今月10日からこれまでに、ロヒンギャ族ら少なくとも1700人の流入を確認している。20日にも新たに避難民433人がアチェ州沖合で保護された。現地からの報道によると、避難民は2カ月以上にわたって海上を漂流。マレーシアやタイの当局は両国領海への進入を認めなかったという。(田村隼哉)