温室効果ガスの「診断」に 環境研とIPB ボゴールで電力消費量調査

 日本の国立環境研究所と西ジャワ州ボゴール市の国立ボゴール農科大学(IPB)は9日、同大の関連施設などで電力消費量を調べる取り組みを開始したと発表した。国立環境研究所が海外機関と協力して都市の電力消費量を調べるのはこれが初めて。温室効果ガス削減の制度運用に向け、データの収集・分析方法の確立につながると期待されている。

 両機関は市内の研究施設やホテル、住宅など100カ所で配電盤からデータを集め、インターネットを介して日本で分析。リアルタイムで施設ごとの電力消費量を可視化できる。富士通がシステムの構築に協力し昨年から準備を開始、今回の発表につなげた。
 規模や設備の古さによって電力消費の傾向が異なるため、今後は調査対象を増やし、市全域の消費量を測る際の分析精度の向上を図る。
 電力消費量の調査は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減に向けた「診断」に相当する。同研究所の藤田壮社会環境システム研究センター長は「日本でも経験則で環境政策を議論する場合が多い」としてデータ収集の意義を説明する。正確な資料に基づいて具体的な政策を議論する必要があるとの考えだ。
 ビマ・アルヤ・スギアルト市長は緑地整備などを通じて環境に優しい都市作りを目指す「グリーンシティー」政策を掲げており、藤田氏も「アジアで一番のエコシティをボゴールで実現したい」と意気込む。
 同大のリザルディ・ブル教授によると、ボゴール市の人口は現在約115万人だが、毎年4万5千人前後(3〜4%)が流入している。人口増加で住宅不足が懸念されるほか、対策を講じなければ、温室効果ガス排出量が2030年に現在の2.3倍に増えると予測されている。リザルディ教授は「データを電力の節約に活用したい」と取り組みに期待した。
 今回の取り組みは二国間クレジット制度(JCM)などの運用にも貢献するものと期待されている。JCMは温室効果ガスを削減するための技術や製品を他国に提供することにより、提供先の国で削減した温室効果ガスを自国の削減分にも算入する制度。削減量の正確な測定が必要だ。
 すでに、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」が宇宙から地上のCO2濃度を観測することに成功している。温室効果ガスが特定の波長の赤外線を吸収する特性を利用して得られたデータを、今回の取り組みで得られたデータと照合することで、衛星の観測精度を向上させることができると期待されている。(田村隼哉、写真も)

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