「国際大会ヘ」企業行脚 小口寄付でファンクラブを 野球イ代表の野中監督
野球インドネシア代表の野中寿人監督は今年開かれるアジアカップとその後の代表チームの資金集めのため、ジャカルタで日系企業を回っている。小口の寄付を募ってファンクラブ結成を考えている。アマチュア野球・ソフトボール連盟の収入の柱を作り、同カップ優勝経験を持つ代表チームを継続的に支援できる体制を目指す。野中監督に聞いた。
―今の状況は。
資金がゼロで用具も全くないため、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)の支援を得て日系企業に一口500万ルピアからの寄付をお願いに回っている。6割くらいの企業が出してくれている。
1月から今月21日までに40社回る予定。これまで返事をもらっている分だけで1億8千万ルピアほど集まった。今年中には200社を訪問するつもりだ。
5月ごろにマニラで開かれる予定のアジアカップ出場のためには1カ月の合宿費用や渡航費などで計8億4500万ルピア(約790万円)が必要。ただ足りなくても、合宿の日数を減らし、大会には出るつもりだ。大会に出て結果を残さなければ、アジア選手権やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など次の大会に出場できないからだ。
―ファンクラブとは。
資金を提供してくれた企業にはファンクラブの会員になってもらう。個人からも1口100万ルピアから寄付を受け付けている。
会員には今後、代表チームの帽子を贈るほか、選手の球を打つなど一緒にプレーする機会を作る。
ファンクラブとは別に日本人に選手の練習相手になってもらいたい。
―クラブを作る理由は。
継続的な資金源が必要だからだ。アジアでも下位の野球代表に政府から資金が出るのは東南アジア選手権大会(SEAゲーム)のみ。そのため、インドネシア・アマチュア野球・ソフトボール連盟が自分で資金を工面しなければならない。2009年のアジアカップで優勝した時は、少数の日系企業にそれぞれ多額の資金を出してもらったが、それでは継続できない。
年会費制のファンクラブがあれば継続可能なチームになる。代表チームはインドネシアのもので、日本企業にばかり助けてもらうわけにはいかず、地元企業にも支援を要請している。
チームが継続的に大会で上位に食い込むことができれば、国からの継続的な補助金も期待できる。
―どうやってチームを強くするのか。
3月末には代表選手2人が、日本のプロ野球独立リーグのチーム「信濃グランセローズ」のトライアウトに参加予定だ。コーチ陣も今年、日本の高校や大学に行って学んでもらう。
インドネシアでは野球はマイナーなスポーツで、プロもないから「食っていける」という認識がなく、それを変えたい。
インドネシア人からプロ選手がでれば、希望が生まれて意識も変わる。そうすればインドネシア野球界の大きな転換点になる。
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野球インドネシア代表は資金や野球用具などの支援を個人や企業、団体問わず募集している。寄付は企業が1口500万ルピア、個人が1口100万ルピアから。問い合わせは野中監督(メールnonaka.66@gmail.com)まで。
◇ 【プロフィル】野中寿人(のなか・かずと)1961年6月6日生まれ、東京都出身。日大三高で捕手として79年甲子園出場。日大に進学し、野球部に入部するも半年で退部。バリ移住後、2006年にクラブチーム「バリレッドソックス」創設。09年にインドネシア代表チーム監督としてアジアカップ初優勝。14年代表チーム監督に再就任。
(堀之内健史)