「貿易赤字、容認できない」 EPA見直し求める 工業省総局長
ゴーベル商業相と宮沢洋一・経済産業相は日イEPA(経済連携協定)の見直しで合意した。インドネシア側では2国間貿易での赤字を問題視する声がある。
工業省のアグス・チャハヤナ国際工業協力総局長はこのほど、じゃかるた新聞の取材に対し、「工業製品の多くの分野でインドネシアの輸入超過になっている。今の状態は容認できない」と述べた。
工業省が実施した日イEPA締結から2013年までの両国の工業製品貿易に関する調査では、11分野中7分野でインドネシア側の貿易赤字。黒字だったのは繊維・繊維製品、食品・水産品、飲料・たばこ、林産品の4分野だった。
中央統計局(BPS)によると、インドネシアの対日輸出額はEPA発行前の2007年には236億ドルだったのが13年には14%増えて270億ドルになった。対日輸入額は65億ドルから193億ドルまで200%近く増えており貿易赤字拡大の一因になっているとの主張だ。
アグス総局長は「日イEPAは継続すべきだが、見直しが行われないなら破棄する可能性もある」と述べた。
ただ農業や水産業、日本からの投資の分野ではインドネシアにも利益があるとの認識を示した。特に日本からの直接投資は大幅に増えている。08年の13億7千万ドルから13年には47億1千万ドルに4倍近くまで伸びた。
(堀之内健史、アリョ・テジョ)
「他国間貿易で評価を」 ジェトロ所長
日イEPAの評価について日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の富吉賢一所長に聞いた。
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日本との2国間貿易では、インドネシアの赤字は増えたが、視点を変える必要がある。日系企業は日本から生産設備や部品を輸入し、インドネシアで生産した製品を世界へ輸出している。自動車関連など様々な製品を輸出しており、貿易収支改善に大きく貢献している。他国間貿易を総合的に評価するべきで、インドネシア側の利益になってないというのはインドネシア政府の中でも一部の見方ではないか。
生産設備メーカーはインドネシアではまだ育っておらず、日本から輸入している。その構造があるかぎり、日本との2国間では貿易赤字解消は難しい。また日本の輸出は他国に比べ突出して増えてはおらず、インドネシアの内需増加によるものが大きい。
ただ日本の消費者はニーズが特殊な部分もあり、インドネシアからの製品輸入が伸びない面もある。日本市場に製品を売り込むために日本への投資も考えており、わずかだがジェトロへの相談もある。
EPAは日本企業にとっては有意義に使われている。在アジア・オセアニアの日系企業を対象としたジェトロの調査ではインドネシア進出の日系企業のEPA利用率は20カ国中58%と、韓国に次いで高い。東南アジア諸国連合(ASEAN)では1位だ。
また、インドネシアのみ日本ASEAN包括的経済連携(AJECEP)を批准していない。インドネシアへの進出企業は内需のみを目的としているわけではなく、ASEAN域内の生産ネットワーク活用のためでもある。批准すれば、さらにイ日系企業のASEANとの貿易が増え、インドネシアからの輸出も増えそうだ。 (聞き手・堀之内健史)