「遺体は甥ではないか」 捜索待つ搭乗者家族
墜落したエアアジア機が出発した東ジャワ州スラバヤのジュアンダ国際空港には機体失踪直後の28日から搭乗者の家族らが駆けつけ、絶望と焦燥の中で越年した。31日に遺体の搬送が始まると、胸を詰まらせながら家族の帰還を待った。
妹のナタリナさん(33)が同機に乗っていたナタリアさん(36)は30日、ジュアンダ空港の家族控え室にあるテレビで機体発見のニュースを知った。「涙も出ないほどショックだった。悲しくて今はこれ以外の言葉は出てこない」。エアアジアの対応と救助活動については「とにかく遅すぎる」と涙ながらに話した。
ナタリナさんは、シンガポールで友人と会って新年を祝い、その後マレーシアを訪れる予定だった。28日はナタリアさんの誕生日だったが、妹のナタリナさんは体調が悪く、誕生日パーティーに来られなかった。母親の家で25日に開いたクリスマスパーティーが、顔を合わせた最後の機会になった。
2人は名前が一文字違いで親友のように仲が良く、何度も一緒に旅行にでかけた。ジャカルタやバンドン、シンガポールへも旅行に行ったことがあり、今年の5月には韓国へ旅行する予定だった。妹のナタリナさんは以前から韓国に行きたがっており、とても楽しみにしていた。
ナタリアさんは「楽しい思い出がいっぱいあるの」と話しながら、スマートフォンで撮影した写真を見つめた。旅行先など撮影した写真でいっぱいだった。「昨夜から何度も写真ばかり見ている」と話し、大切そうに両手で携帯を握りしめた。
ロニーさん(37)の甥(おい)のアドリアン・フェルナンドさん(13)も、親戚家族と年末年始の休暇でシンガポールに行く途中だった。ロニーさんはスラバヤへの遺体搬送が進む1日、「遺体が見つかり、運ばれて来る度に甥じゃないかと恐くなる。でも見つかって早く帰って来てほしい気持ちもある」と複雑な胸中を語った。
事故情報が集まる危機管理センターは1日、ジュアンダ空港から遺体識別が進むバヤンカラ病院隣の東ジャワ州警に移設。機搭乗者の家族や国内外の報道陣200人以上が集まり、遺体の身元特定を待った。
遺体の識別を待つ被害者家族らの表情は硬い。12月30日に機体が発見された時には4人が気絶するなど、張りつめた空気が漂っている。危機管理センターを訪れたリスマ市長は「搭乗者家族から墜落現場に行きたいなどの要望が多く、できるだけ応えていきたい」と話した。 (堀之内健史、毛利春香)
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