「MRT効果を最大限に」 日本、ソフト面でも協力 建設開始から1年
日本の建設会社が中心となって建設する大量高速鉄道(MRT)を最大限に活かすため、国際協力機構(JICA)がソフト面で支援する内容を盛り込んだ「首都圏都市交通政策統合プロジェクト(JUTPI)フェーズ2」が8月発足した。ソフト面での協力は安倍政権が掲げるインフラ輸出の要。インドネシア第1号のMRT建設を通して運営や規制作りの面で日本の存在感を高めることで、今後同様の事案が出た際に日本勢が有利に受注競争を進めるモデルケースとなりそうだ。
JUTPI2はJICAと経済調整事務所、国家開発計画庁(バペナス)が協力し主に、①ハード事業への側面支援②各種事業の経済効果を調査③自治体へ実行を促す―ことが役割。8月からJICA専門家として経済調整事務所に派遣されている秋村成一郎・都市交通アドバイザーがプロジェクトリーダーを務める。
首都圏のインフラ不足解消で協力していくことで日イ政府が合意した首都圏投資促進特別地域(MPA)構想の実現に向け、省庁間や中央政府と地方政府の横断的な関わり、ジャカルタ首都圏都市交通マスタープランの実施支援に加え、MRTへのソフト面への協力が主な仕事になる。
「MRTへの協力で鍵になる部分が、どれだけ多くの人に利用してもらうか」と秋村氏は強調する。完成したMRTの性能がどれほど良くても使われなければ意味がない。「家から駅、駅から仕事場までのアクセスが悪ければ、使わずに二輪車で通勤しようとなってしまう」。
MRT支援では国鉄駅の近くにMRT駅を設置、さらにトランスジャカルタの停留所を駅近くに移動させ、地下道で各駅を結ぶなどして交通機関の連結性を高める。
JICAはこれまでに中央ジャカルタ・ドゥクアタス駅で都市整備事業準備調査を終えた。秋村氏によると、トランスジャカルタの停留所をMRT駅近くに移動させ、国鉄駅とも地下道でつなぐ。さらに周辺にショッピングモールを作り経済を活性化させることも計画する。
また各交通機関の運行情報を統合し、利用者に最適なルートや乗り継ぎ手順を提供することで利用者を最大化する。
■州政府に運営助言も
ソフト面支援のもう一つの柱がMRT運営へのサポートだ。
MRTを運営するMRTジャカルタ(MRTJ)社の株主であるジャカルタ特別州政府にJICAが運営や規制作りに協力する専門家として秋元亮一ジャカルタMRTアドバイザーを派遣。コンサル会社による鉄道事業や経営への提案を元に州政府が決定する際に助言していく。またMRTについて、金融や建設、運営計画に関する州政府への窓口を明確化し、手続きや意志決定を迅速にするなど組織体制の見直しも進めている。
MRTJ社だけでのMRT運行は難しく、海外から専門家を呼んで運営に関わるか、鉄道事業会社と合弁会社で運営するとみられる。
日本は事故が起こるたびに鉄道運営業者と当局が話し合って規制を強化し、それに沿って鉄道会社が運行マニュアルを作成、当局に提出することで安全基準を作ってきた。その方式も導入することで、今後マニュアル作りで日本の鉄道事業会社が協力する機会を得る可能性がある。また日本の安全基準が求められたときには、信号システムや車両の入札などで優位に立てそうだ。(堀之内健史)
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