新しい経済関係に道筋 国民優先の政治に注目 大八木委員長インタビュー解説 ジョコ新政権で土壌整う 経団連
経団連の日本・インドネシア委員会の大八木成男委員長の発言は、ジョコ・ウィドド新大統領の下でインドネシアとの新しい経済関係の確立に大きな期待をかけたものと言える。今回の大統領選挙でうかがえる民主主義の定着による社会の安定と新大統領の国民優先の政治姿勢で、インドネシアとの望ましい経済関係構築の道筋がある程度見えてきたことによる。
大八木委員長は、途上国が発展するカギは民主的な政治体制の確立にあると指摘した。1998年に、30年余り続いたスハルト開発独裁政権が崩壊した後、インドネシア国民が徐々に進めてきた民主化がユドヨノ政権でほぼ定着、そして今回の大統領選挙が平和裏に終わったことは、経団連にとってもインドネシアでの事業に安心して取り組める土壌が整ったことを意味する。
さらに、その政治情勢に押されて登場したジョコ氏の基本姿勢は、日本経済界がインドネシアに描く今後の展開のイメージに重なっている。民生化向上に必要な経済発展のカギは各種インフラ(経済的社会基盤)。ジョコ政権の下でのインフラ整備に日本側は官民一体となって資金、技術的に協力することで両国の経済関係は一層進むという期待感がふくらむ。
大八木委員長はインドネシア経済が将来的に有望なことをさまざまな角度から指摘した。国土、人口、労働力などで大国の要素を持っている。その中で消費財需要の伸びが大きい、サービス産業や流通業が著しく伸びていることに着目、新興国の中でも前向きな状況にある。経済的潜在力は日本経済界にとっても極めて魅力的である。
ただ、インドネシア側にこうした成長性を妨げる要素もインフラの問題のほかにさまざまあることも確かである。自国産業を守る保護主義的傾向がサービス産業や流通業にも強まっていることはその一つである。
インフラ整備も含めて同委員長はこうした問題点の克服、解決のため日本インドネシア間で官民合同の経済フォーラム開催の検討に入っていることも明らかにした。
一方で、課題も少なくない。経団連の日本・インドネシア委員会のインドネシア側パートナーであるインドネシア商工会議所(KADIN)の組織や運営は、日本側が期待するほどの水準にはない。運営の中心は人口で圧倒的多数派であるものの経済力に限界があるプリブミ(マレー系国民)である。同国経済の8割を占めるとされる華人系ビジネスマンには二国間強力に積極的に取り組む発想は少ないからで、経団連にとってもこうした問題をどう克服するかもひとつの宿題である。(小牧利寿)