新大統領の素顔を知りたい ジョコウィ本、動き出す

 新大統領当選が確実になったジョコウィ氏の本が書店で売れ始めている。中央ジャカルタの紀伊國屋書店スナヤン店では9日の選挙結果を受けて、ジョコウィ本と副大統領となるカラ氏を扱った本を並べたコーナーが設置された。

  コーナーにはジョコウィ氏関連が2冊、カラ氏関連が3冊、同店では選挙戦がテレビで連日報道されるようになった5月ごろから少しずつ売れ始めたが、9日の選挙結果を受けて問い合わせが一気に増えた。「中でも売れているのは政策を中心に書いたもの」と紀伊國屋書店インドネシアのインドネシア書担当マーチャンダイザーのサイフルさん(30)は言う。
 ジョコウィ本では2012年11月に発売された「JOKOWI」(ティガスランカイ・メタグラフ発行)がベストセラーになった。ジャカルタ特別州知事に選出された直後でもあり、ジョコウィ氏の生い立ちと人柄を書いた本として話題を呼んだ。また同8月グラメディア・エレックスから発行された「JOKOWI〜河川敷の精神」は現在8刷のロングセラーになっている。同社の編集担当は「よく売れている。また動き出すだろう」と話した。
 関連書の数ではカラ氏の方が多い。政治的キャリアに加え、経営者としての実績があることから「政治からビジネス書まで取り上げられる分野が広い」(サイフルさん)。 
 新大統領の素顔を知るためか日本人客からの問い合わせが、この2日で来るようになった。本の内容を知りたいというものだ。ジョコウィ関連本の日本語翻訳は1冊もないため、インドネシアとの関係が深い企業関係者からの問い合わせと思われる。 (阿部敬一、写真も)

スカルノ、スハルト本強し 本人のカリスマ性が必要
 歴代の大統領本の動きはどうなのか。紀伊國屋書店インドネシアでの売れ行きの2トップは初代大統領のスカルノ氏、2代目のスハルト氏関連本だ。ロングセラーが多く、時期を問わず安定的に売れ、販売額では他を圧倒する。「年齢が上の方は昔を懐かしむ、若い方はその時代の政治を通じて国の歴史を学んでいるのでは」と清水洋江同店アシスタントマネージャーは言う。
 ユドヨノ現大統領本も多いが売れ行きは今一つ。3代目大統領のハビビ氏については「愛妻家と知られ、その人柄を描いた本が何冊かあります」(同)。4代目ワヒド氏、5代目メガワティ氏は、現在同店での取り扱いはない。
 売れる大統領本の決め手については「本人にカリスマ性があることにつきます」と清水さん。政治的な実績はもちろんだが、本人の意外な素顔を知りたいという点が一般読者の購入動機となる。ジョコウィ本は今後の活躍次第で売れ行きが左右されそうだが、書店として気になる政治家がプラボゥ氏。「素顔を描いた本が1冊もない。出れば売れると思います」と言う。
 政治家本をよく読むという主婦のヤンさん(72)は「政治的信条だけを著した偏った内容の本が多い。この国の政治の分析をもっとしてほしい」と話す。

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