不可抗力の適用を通知 Jパワーなど政府支援求める バタン発電計画
土地収用が進まない中部ジャワ州バタンの石炭火力発電所計画について、伊藤忠や電源開発(Jパワー)が出資する事業会社ビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)はこのほど、これ以上の土地収用は困難とする不可抗力条項の適用を国営電力PLNや建設会社に通知した。今後は政府やPLNの支援を受けながら計画を進めたい考えだ。
不可抗力条項とは自然災害や戦争、暴動など、当事者では解決不可能な状況になった時に契約が不履行になっても責任を問われない条項。
Jパワー広報は同条項の適用理由について「現地の反対派の抗議やNGO(非政府組織)の扇動により社会不安が生じ、用地取得が完了できないため」と説明。「今後は政府やPLNの支援を受けながら計画を進めていきたい」と話した。
BPIに出資するアダロ・エナジーの声明によると、用地226ヘクタールのうち、15%が未収用。当初は2016年に操業予定だったが、土地収用が進まず、収用期限を2度延期していた。
計画ではバタンに計2千メガワット(MW)の発電所を総事業費40億ドルで建設し、PLNに25年間売電する。インドネシアの包括的な開発計画「経済成長促進拡大マスタープラン(MP3EI)」の一つで、完成すれば東南アジア最大級の発電所となり、電力不足解消に大きく貢献すると期待されている。
BPIにはJパワーが34%、伊藤忠が32%出資している。日本政府としても現政権が重視するインフラ輸出の重要プロジェクトとして、状況打開を求めてきた。
人口や経済活動が集中するジャワ島の電力需給は逼迫(ひっぱく)している。PLNはバタンの操業が遅れるとして、北ジャカルタのタンジュンプリオクやムアラカランのガス発電所(ともに800MW)や西ジャワ州ブカシのムアラ・タワルのガス発電所(400MW)の建設や西ジャワ州チルボンの火力発電所を1千MW増設する計画を早める方針を示した。