原生林破壊、世界最速に ブラジルの約2倍 政権の保護策失敗
米メリーランド大などの研究チームは、インドネシアがブラジルを抜いて世界最速の森林破壊国になっているとの調査結果を、6月29日付けの英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ電子版に掲載載した。ユドヨノ政権の森林開発の凍結措置(モラトリアム)は失敗し、専門家から批判が出ている。
調査チームに参加するブリンダ・アルナルワティ氏は昨年11月にも衛星画像を使用した森林破壊の調査結果を米科学誌サイエンスに掲載。前回の調査では原生林の破壊の規模が測れていなかった。今回はより詳しく調査して602万ヘクタールの原生林が2000年〜12年の間で失われたと明記した。この面積はイギリスの面積の約半分、バリ島の10倍。12年には84万ヘクタールが失われた。これはインドネシアに次いで、消失面積が大きいブラジルの46万ヘクタールの2倍近い。国内で最も森林破壊が進んでいるのがスマトラ島で、次いでカリマンタン島、パプア島と続く。インドネシア政府は実際の減少面積は45万ヘクタールにとどまると反論している。
■原因はパルプ材 パーム油の開発
原生林の多くはパルプ材やパームオイルのプランテーションので開発が進んでいる地域と指摘されている。環境団体グリーンピース東南アジア支部のユユン・インドラディ氏は「モラトリアムは失敗した」とユドヨノ政権を批判。「希少な動植物の消失や煙霧被害など大きな損失もあった」と指摘した。
ユドヨノ政権は11年、天然林・泥炭地の開発を定めた森林開発の凍結措置(モラトリアム)を実施。昨年5月には15年までモラトリアムを延長した。20年までに自助努力で温室効果ガスの排出量26%、海外援助を含めて41%削減する目標も設定しているが、森林破壊が進めば達成は不可能だ。ノルウェー政府も森林保護のために10億ドルの資金援助をしているが、インドネシア政府は目標達成のためにさらに50億ドルが必要だとしている。
REDDプラスインドネシアのヘル・プラスティヨ所長は「目標達成のため新たな投資が必要だ」と話した。
森林開発に次期政権に期待が集まるが、環境対策に積極的だったユドヨノ大統領とは対照的に、大統領候補のジョコウィ氏もプラボウォ氏も温室効果ガス削減には意欲的でない。テレビ討論会でも環境政策は議論にならず、両氏はインドネシアの食糧自給の達成のために、ジョコウィ氏は900万ヘクタールを、プラボウォ氏は400万ヘクタールの農地を開発するとしている。(高橋佳久)