ジャワうなぎ日本へ ジャワ・スイサン・インダ 7月から本格輸出開始
インドネシア産のウナギが日本の市場へ。ジャワ・スイサン・インダは7月中旬から、インドネシア産のウナギ「ジャワうなぎ」の日本輸出を本格的に開始する。本年度は70トンの輸出を見込み、将来的には5カ年計画で年間500トンまで増産予定だ。同社はインドネシア産のウナギとしては、シラスからの養殖に初めて成功。ニホンウナギの漁獲量が減少し、ウナギの値段が高騰する日本うなぎ業界にジャワうなぎが新風を吹き込む。
ジャワ・スイサン・インダは、西ジャワ州スカブミ県プラブハン・ラトゥで2009年に創業。インドネシア近海でとれる「アンギラ・ビカラー種」がニホンウナギ(ジャポニカ種)に近いことに着目し、いけす設計、水質管理などの日本式養殖技術を使い、稚魚から成魚までの養殖を行ってきた。ウナギは約0.20グラム程のシラス、5〜50グラム程に育った黒子を経て、成魚になる。インドネシアにある競合他社は黒子から養殖を始めるところが主で、シラスから養殖に成功したのは同社が初めて。シラスから養殖を始めることで、味、食感など、よりニホンウナギに近いウナギを養殖できるという。また、蒲焼加工施設やトンネルフリーザーも完備。養殖から蒲焼き加工までを1社で行える体制を構築した。「ジャワうなぎ」として商標登録を取り、11年からインドネシア内の日本食レストランなどに卸してきた。日本のうなぎ市場に売り込めるだけの体制と品質が整ったとして今回、日本への本格的な輸出を決めた。
日本への輸出を決めた背景には、日本のウナギ業界の厳しい現状が関係している。日本で消費されている国産ウナギの99パーセントは養殖だが、実際はニホンウナギの天然の稚魚、シラスウナギを中国や台湾から輸入して国内で養殖し、国産として売り出すものが半数を占める。そのシラスウナギが不漁により、09年に1キログラムあたり38万円の取引額が、13年には平均248万円にまで値上がりした。今年の漁獲高は持ち直す見通しだが、今年6月に国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを絶滅の恐れがある野生生物を指定する「レッドリスト」に加えるなど日本のウナギ業界の風向きは悪い。そこで、味、食感ともにニホンウナギに近いジャワうなぎを日本の市場に売り込んで販路拡大を狙う。ジャワうなぎについては、日本鰻輸入組合の森山喬司理事長も「ニホンウナギと遜色ない」と太鼓判を押す。
また、ボゴール農科大学や海洋水産庁、西ジャワ州政府とも協力。用地提供や研究施設提供を受ける傍ら、うなぎ養殖技術を大学や地元漁師などに還元していく。地元漁師はシラス捕獲技術、養殖技術を学び、収入増加につなげ、将来的にはウナギを使った村おこしにつなげていく狙いだ。同社の瀬戸内力さんは、「インドネシアは世界で最後のウナギ稚魚市場。だが、インドネシアは水産加工技術に乏しい。日本のウナギ養殖、加工技術を持ち込み日イ両国に利益をもたらしたい」と話した。(藤本迅)
■資源管理向け議論 JICA・海洋水産省がシンポ
国際協力機構(JICA)と海洋水産省は11月下旬にインドネシア産ウナギのビカラー種の資源管理や貿易について議論するシンポジウムを開く。日本への輸出が始まったビカラー種の漁獲規制はなく、絶滅危惧種に指定されたニホンウナギの二の舞にしないための取り組みの第一歩になりそうだ。
ウナギの養殖は稚魚であるシラスウナギを漁獲して育てる。日本の水産庁の統計によると、1960年代には200トンを超えていたニホンウナギのシラスの漁獲量はここ数年までに9割以上も減少。その主な要因が穫り過ぎや食べ過ぎとされている。
海洋水産省にJICAから派遣されている野村一郎・漁業政策アドバイザーによると、インドネシアでは漁獲規制がほとんど無く、シラスウナギに関しても量が豊富なジャワ島、スマトラ島の河口付近では「獲り放題」の状態。今は業者も少ないが、今後続ければ、ニホンウナギのように漁獲量が激減しかねないと海洋水産省も懸念しているという。
シンポジウムにはインドネシアから中央・地方政府関係者や学術関係者、ウナギ関係者、日本、台湾、中国の専門家を招いて規制の方法などを話し合う。
インドネシアのウナギ業者の1人は「インドネシアでの養殖はリスクが高く、急激に漁獲量が増えるとは考えられないが、長期的に見れば規制は必要なのではないか」と話した。(堀之内健史)