【特集】東ジャワ州大統領選挙情勢(下) 個人の自立か、キアイの権威か からまるメディア、多様化する投票、土着の論理  (2014年07月01日)

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 東ジャワ州の選挙戦で、ジョコウィ陣営は「自分で選ぶ」個人を見ている。プラボウォ陣営はキアイ(イスラム知識人)ら地域ボスの集票に期待する。ここに土着の論理がかぶさる展開になっている。(吉田拓史)

▼マーフッド効果は
 「『マーフッド効果』が大きい」。プラボウォ陣営のブロトクントロ氏は力説する。マーフッド元憲法裁長官はジョコウィ氏の副大統領候補の一人からプラボウォ選対本部長に大返し。マドゥラ出身の法学者はマドゥラ系キアイの支持を運んできたという。
 州内にまくチラシには、最大イスラム団体「ナフダトゥール・ウラマ(NU)」のサイド議長の言葉、有名キアイをマーフッド氏と訪れ祈るプラボウォ氏の写真。極めつけはNU創立者の息子で4代大統領の故ワヒド氏が「庶民に最も誠実なのはプラボウォだ」とのセリフをはく。「故人はそう言っていない」とワヒド長女イェニー氏が抗議しているが。ブロトクントロ氏は州東部の支持を固めたと話した。

▼自立する有権者
 だが、闘争民主党(PDIP)東ジャワ支部のヌグロホ副事務局長は有権者は「独立」していると話した。「キアイの意向がその下々の人々に届くという証拠はない。有名なムスリマ(女性のイスラム教徒)のコフィファ氏がジョコウィ支持のため、女性の敬けんな信者の多くが来る」。しかも4月の総選挙で1位の民族覚醒党(PKB)と2位のPDIPの上位タッグだ。
 ヌグロホ氏は両者の支持率が近づいた要因は別にあると考える。「一騎打ちでこの人が嫌いとなれば逆方向に行く。支持が割れるのは自然」。
 加えて中傷キャンペーンだ。中傷タブロイド「オボールラクヤット」よりも効果的なのは携帯電話のSMS。「教師の弟2人はジョコウィ氏中傷SMSをたくさんもらった」。SMSを見た人々が市場やワルン(屋台)で話題にすると、事実かどうか無関係に一気にうわさが流布する。携帯、テレビ、ソーシャルメディアの新旧メディアが支持獲得に大きな役割を果たすが、それは中傷の流通経路にもなった。

▼4地域に土着の論理
 ここに地域の土着の論理が絡む。クスナディ同支部事務局長は州には言語が異なる4小グループがあり、それぞれアイデンティティを持つと説明する(図)。「ジョコウィ陣営は『マタラマン』と『アレック』で強い。マタラマンはマタラム王朝(16〜18世紀)の流れを引く地域。中部のジャワ人に近くナショナリストが強い。『アレック』はスラバヤを含む都市部。有権者は個人で考え合理的な判断をする」。東部のマドゥラ人が多く後進地域の「タパルクダ」はイスラム色が強く、プラボウォ陣営が強い。
 最後のマドゥラ島は王朝だ。「まだ独立していない。ほんの数人が投票先を選び、みんな従う構図だ。もし逆らえば暴力を振るわれる」。バンカラン県の大立者フアド元県知事がプラボウォ支持。「同県では彼と異なる投票は事実上不可能だ」。

▼世代間の対決
 ジョコウィ陣営は戸別訪問に重点を置く。中央選対は直属の草の根選挙組織「レラワンジョコウィ」を全34州に配備。東ジャワ州にはPDIP執行部のヨヨン青年部副部会長が4ヵ月前に入り「数千人規模の人がいる。カンプンに入りドアを数珠つなぎにする個別訪問が一番効果的だ」。
 プラボウォ氏は「庶民に近い」と主張を似せ、ジョコウィ氏の良さを消そうとする戦略を打つ。「ジョコウィ氏が『庶民の中から出てきた』ことを売る」。プラボウォ氏は裕福な一家に生まれたため、「中から出た」ことが大きな違いになると踏む。
 ヌグロホ氏は世代間のぶつかり合いが背景にあると話した。「公務員がそう。若い人はシステムを改革しなくてはいけないと思いジョコウィ氏を支持する。高年齢層はそれを恐れている。実業家も若い人は開かれた仕組みを求めている。すでに成功している人は現状が変わることを恐れる」。
 「スハルト」はプラボウォ氏とともに復活。スハルト世代とレフォルマシ(改革)世代の葛藤が今も続き、再び両勢力の決戦になっている。

これに行政、キアイ、青年団、プレマン組織の政治プレイヤーが重なる。東ジャワ州一つとってもここまで複雑で、他の33州でも同じような状況だ。
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有権者がかつてない情報量にさらされる時代になった。三つのメディアが絡み合うため、どれがどう効果を示すのかは、誰にも分からない
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