【ジャカルタ FOCUS】もろい交通こたえる 郊外団地で孤立、失業 (2014年05月26日)

Share (facebook)
このエントリーをはてなブックマークに追加 LINEで送る

 開発に伴う団地移転がつまずいた。移転先の質が悪かったり、交通手段がなかったりするのが原因だ。立ち退きだけを先に進めれば低所得者を孤立した郊外に放り出しかねない。
 東ジャカルタ・プロガドゥン、リアリオ貯水池周辺の立ち退き問題はとても複雑だ。地権をめぐり、第3代副大統領の故アダム・マリック氏の財団と州公社プロマスが対立し、法廷で争うが、土地の一部には、人数も定かではない7隣組の住民がカンプンをつくり、居住権を主張する。
 昨年から立ち退き問題は混乱を極めた。昨年3月の火災が家屋200戸を焼いた後、団地への移転が浮上。州政府は空き地だった南岸を公園にした。プロマスは11月に一部の500世帯の家屋を強制撤去したが、反発したアダム財団が自警団「ラスカルメラプティ」を雇い、土地に詰めさせた。ブタウィ人の権利を守るという大義名分で自警団「フォールム・ブタウィ・ルンプッグ(FBR)」も詰め所をつくる。こうなってしまえば記者の取材に答えづらいという住民が多かった。「立ち退きの際、150世帯は東ジャカルタ・チャクンの公営住宅(団地)に移転したが、350世帯は何も与えられなかった」(FBRの構成員)らしく、反感も強くなる。
 住民にとっては、移転者が団地で苦境に陥ったため、移転してもだめ、残れば立ち退きの袋小路だ。州政府は団地移転者にはベッドやテレビなどを与え、6カ月は家賃無料。だが実際には水道が壊れているなど設備にほころびが見つかった。
 問題の根元には、深刻化する渋滞と公共交通機関のもろさがある。住民のヤディさん(53)は「住民のほとんどが、付近で露天商かメイドで生計を立てている。それが郊外の団地に移ると、徒歩に加えて、アンコット(小型乗り合いバス)を3回乗り継がねばならない」と話した。「職を失い、カンプンに戻ってくる人が増えている。州政府とプロマスは住民を、遠隔地に移らせて、苦しめた」。
 オートバイを持たなければ遠くで働けないのが首都の実情だ。規制を無視した金融業者でも、オートバイ購入の頭金は50万ルピア、月払いは70万ルピアほど。零細労働者には苦しい。「オートバイは立ち退きのとき帰郷するために売ってしまった」と落ち込むのは古着売りのナナンさん(40)。職場の西ジャカルタ・グロゴルまでバスを3回乗り継ぎ、片道3時間の移動を強いられるという。日銭を稼ぐため廃品回収もし、生活は苦しい。
 これは小覧で紹介したプルイット調整池、チリウン川流域の団地移転と同じ状況だ。このまま団地移転を続ければ孤立した郊外に低所得者を追い出すことになり得る。団地がスラム化した事例は世界中にたくさんあり、近年の日本もその兆しがある。
               ×  ×
 立ち退き後の青写真がある。州公社ジャックプロは地元メディアに対し緑地15ヘクタール、湖9ヘクタール、コンサートホール3ヘクタールの開発をすると発表。池と内環高速道を挟んで西に隣接する中央ジャカルタ・チュンパカプティは、新たなCBD(中央ビジネス地区)になり得ると言われる。トランスジャカルタ、高速道、将来的には大量高速鉄道(MRT)と交通がそろう。今月初旬には不動産大手リッポーが高層オフィスビルを開業。ヤディさんは「プロマスは緑地ではなくアパートメントにするつもりだ」。(吉田拓史、写真も)

ごみの散乱した貯水池沿い。付近での火災で200世帯が焼けた
ごみの散乱した貯水池沿い。付近での火災で200世帯が焼けた
地権を主張するアダム・マリック財団。財団も病院、アパートメント建設を目論む
地権を主張するアダム・マリック財団。財団も病院、アパートメント建設を目論む

土地に詰める自警団「ラスカルメラプティ」。24時間、計15人体制。土地争議が多く仕事の機会が増えているそうだ
土地に詰める自警団「ラスカルメラプティ」。24時間、計15人体制。土地争議が多く仕事の機会が増えているそうだ

このカテゴリの最新記事

本日のニュース一覧