マングローブ植林 女性漁民も「再生」 収入多様化、地元に還元
行き過ぎたアブラヤシ農園開発が問題視される北スマトラ州で、地元女性漁民たちが河口沿岸部のヤシ農園跡地にマングローブを植林している。生態系が回復し、戻ってきた魚類を穫る直接収入だけでなく、海産物加工の副次的な経済効果ももたらしている。環境とともに地元住民の暮らしも「再生」したモデルになりそうだ。
同州ランカット県西ブランダン群プルリス村で活動する「伝統漁民女性の会」のラヒマ代表は先月、地元メディアに女性漁民の1人当たり平均月収がかつての50万ルピア(約4500円)から現在は250万ルピアに跳ね上がったと胸を張った。
漁業組合の提案で、ヤシ農園として使われてきた地域にマングローブ林を再生させるため、植林を数年前から開始。魚類、エビ、カニ、貝類が戻ってきた。
会が力を入れるのは、漁獲指導だけでなく、女性会員らに対する海産物の加工トレーニングだ。食品、飲料の原料になるほか、マングローブ炭も化粧品の原料として注目されている。付加価値を付け、地域経済に漁業と加工業の相乗効果をもたらす狙いだ。既に女性150人が加工技術研修を受けた。
ラヒマ代表は、マングローブ植林は地元住民に短期的な収入増だけでなく、持続的な経済効果を与えると指摘。「沿岸部の水質が改善され、生態系が回復したことで漁民の収入源が広がり、住民が経済的に自立する基盤を生み出した」と実感する。植林したマングローブは30年間は生息するという。
プルリス村の女性漁民たちに指導してきたのは、全国伝統漁業連合スマトラ支部。ハイブアン支部長によると、これまでに西ブランダン群内の8地域を対象にマングローブの苗を30万本植林してきた。
対象地域は、かつては豊かなマングローブ林だったが、アブラヤシ農園への開発・転用により絶滅していた。再生により8地域の漁民の収入も増えているという。(月岡亜梨沙)