ジョコウィ口撃にかじ 「メガの操り人形」「約束破り」 プラボウォ氏

 大統領選をにらんだ動きはジョコウィ特別州知事とプラボウォ・グリンドラ党最高顧問の一騎打ちの様相を呈してきた。2012年同州知事選でジョコウィ氏を支援したことで苦境を招いたプラボウォ氏は、ここに来てネガティブキャンペーンに踏み切った。
 プラボウォ氏は「強い指導者」イメージで2012年の世論調査で大統領候補として最も支持された。決断の遅い慎重居士とみられ、支持を落としていたユドヨノ大統領と対比的なキャラクターを売り込んできた。
 だが、12年6〜9月の州知事選では民主党の牙城であるジャカルタに食い込もうと民主党連合の現職に対し、ジョコウィ(闘争民主党=PDIP)―アホック氏(グリンドラ党)を支援したのがあだになる。
 グリンドラ党側はジョコウィ氏が約束を破り、恩を忘れたと非難している。同党の主張は「プラボウォ氏と弟ハシム顧問会副会長がジョコウィをソロから連れてきて、選挙を助けた」。にもかかわらず、ジョコウィ氏が裏切ったという筋だ。
 スハルディ同党党首は2日「州知事選でプラボウォはジョコウィに600億ルピア(約5億4千万円)を渡した」と話した。この資金はプラボウォ氏が会長を務める全国市場商店主協会を通じて4局・3日間のテレビコマーシャル(CM)に費やされたとし、CMで2人の支持をうたったプラボウォ氏は「(ジョコウィ氏のせいで)刑務所に入らなくてはいけないはめに追いやられた」と批判した。
 ジョコウィ氏の資質・人格を問う姿勢も見せている。「大統領候補になるのにあれだけ右往左往している」と16日の中部ジャワでの遊説で批判。23日の遊説では、ジャカルタで任期5年働く約束を破ったとして「うそをつくのが本性」とし「(メガワティ党首の)操り人形だ」と非難。メガワティ氏が09年大統領選でのプラボウォ氏との連合時、14年大統領選ではプラボウォ氏を支持すると誓約していた問題でも「メガワティは私をだまし約束を破った」と激しく攻撃した。
▼闘争は反論
 メガワティPDIP党首は31日の遊説で「ジョコウィ氏は操り人形ではない。どこが悪く、どこが良いのかを分かる」と反論。12年州知事選での約束をめぐっては闘争民主党側の説明は異なる。
 カラ前副大統領(ゴルカル党)がソロ市長だったジョコウィ氏に電話をかけ、州知事選出馬を持ちかけた。ジョコウィ氏はメガワティ氏の判断に託すと答えた。カラ氏はメガワティ氏に連絡して出馬が決まった。PDIPは当選時にこの話を地元メディアに発表していた。
 もう一つの説がある。政治学者のイクラル・ヌサ・バクティ氏によると、闘争民主党関係者の説明ではメガワティ氏がジョコウィ出馬に前向きだったが、夫のタウフィック氏は選挙資金がないため消極的だった。ここでプラボウォ氏が資金確保を約束し、民主党連合に入るのを嫌い、出馬を推した。支援者はプラボウォ兄弟だけでなく、現職知事と対立していたジャン・ファリズ住宅相(開発統一党=PPP)や、ソロの伝統化粧品富豪ムルヤティ・スディビヨ氏ら。
 アホック副知事は党の姿勢と副知事職で板挟みだ。600億ルピア支援について「そんなカネはジョコウィ―アホック陣営にはなかった。たぶん、プラボウォ氏はCMに使ったのではないか」と指摘。アホック氏には一時PDIP移籍説があり、ジョコウィ氏が大統領候補になると、知事昇格に意欲を表した。これは党候補プラボウォ氏がジョコウィ氏に負けることを想定しているため、党執行部の不興を買ったという。 (吉田拓史)

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