1村10億ルピアバラマキ 村落法を選挙利用 7万2944村 各政党

 中央政府からの交付金を直接村に配ることを定める村落法を、自分の実績として利用しようと各政党が綱引きしている。バラマキ政策を党の功績として、選挙で利用する手法に批判が出ている。
 村落法は国の補助金「地方交付税交付金」のうち10%以上と、村の上の行政単位、県・市予算の10%以上を、村に直接配分することを定めた。2014年の交付金は592兆ルピアで、一部報道ではこのうち107兆ルピアを7万2944村に直接配分する。
 これまで県・市を経由して交付金を村に支給しようとしても、途中の着服がひどく、村まで予算が届かないのが実態だった。今年2月時点で州・県・市の首長524人のうち318人が汚職事件の容疑者になっているほど、地方政治は腐敗している。このため村落法は県・市が村に渡す資金の量も明記し、交付金が途中で消えない仕組みを作った。
 だが、これは村への利権分与という側面もあるため、政党は選挙に利用しようと躍起だ。与党ゴルカル党のバクリー党首は21日の講演で「大統領になったら、最初に発令するのが村落法の政令。各村に12億ルピアを配分する」と語った。民族覚醒党(PKB)、国民信託党(PAN)の与党も自分の手柄と主張した。
 さらに、日刊紙コランテンポ電子版は、グリンドラ党のプラボウォ最高顧問が各村長に対して、10億ルピアの開発予算を配分すると約束した文書を送付していたことをスクープ。文書は村落法に言及してはいないが「われわれが率いる政府は国家予算から毎年、すべての村に10億ルピア以上を配分する」とうたう。だが、グリンドラ党は同法成立の推進役を果たしていない。
 ユドヨノ大統領は24日、ジョクジャカルタ特別州バントゥル県で全国村落協会の全国会議に出席。同協会は村長が組織する一種の陳情団体。ユドヨノ氏は5月に法律の実施細目を定める政令を発令し、一村当たり14億ルピアの配分を始めると話した。「地方の福祉を高め、開発を加速できる。われわれは村落を開発することに対して誠実で、敏感、努力を怠らなかった」。村落法は民主党の手柄と印象付ける狙いがはっきりしているが、これを協会は歓迎。アレックス同協会第1委員は「村の道路、電気系統、村役場に使える。町内会長を含めて会計報告を義務付けるので、汚職の心配はない」と語った。

■監視は困難、調査せず
 だが、経営者協会(アピンド)のソフヤン・ワナンディ会長は村落法施行を15年まで先延ばしするよう求め、「汚職の温床になりうる。ある政党の人気取りに使われているのではないか」と批判。ガマワン内務相も「7万2944村の監視は難しい。500の県市が限界だろう」と話す。東西5千キロ島しょ国の隅々にカネをばらまけば、汚職は容易だろう。
 民主党は昨年6月の燃料値上げに伴う低所得層向けの現金直接給付、生活扶助、奨学金を功績として、テレビコマーシャルで宣伝している。政策効果を高める家計調査が必要だが、中央統計局のデータに基づいて実施された現金直接給付では、受給できない貧困者が続出した。ユドヨノ政権は年初、社会保障機関(BPJS)を発足させ、国民皆保険を目指しているが、制度に不備が続出。制度自体を知らない国民も多く、政策の実施はなおざりで「政治利用」された格好だ。(吉田拓史)

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