【スラバヤ動物園の真相】(上) 劣悪極まる飼育環境 おりに詰め込み、水槽真っ暗 「問題は職員」と園長
ライオンの首つりなど信じがたい「事故」が続いたスラバヤ動物園(東ジャワ州)は、内外のメディアから「死の動物園」のレッテルを張られた。背景に10年以上続く経営陣の派閥争いや、飼育員の教育不足による飼育環境の悪化がある。問題は放置され、深刻化した。いったい何が起きていたのか。
オランウータンは来園者が投げ与えてきた食物でまるまる太り、丘の上で寝そべっていた。運動用の樹木が少なく、運動不足は明らか。遠くから苦しそうなライオンの雄叫びが響き渡る。訪れたのはウイークデイだが、客はまばら。
■愛情が感じられず
飼育環境は劣悪だ。飼育数は197種3459匹とインドネシア最大級だが、数が多いために各所で狭いおりの中に動物が詰め込まれている。ペリカンはいっぱいで羽を広げられないほどだ。シカはどろどろの土の上で寝転がるしかない。飼育小屋は老朽化し、おりは赤茶色にさび付く。園内にある水族館は照明が切れ、真っ暗な中に水槽だけが青黒くぼんやりと光る。これで動物園と言えるのか、動物好きの人には動物虐待のように見える。愛情が感じられない。
「汚い」「臭い」「つまらない」と市民の評判も良くない。オランダ統治時代の設立で「スラバヤのシンボル」といわれた動物園だが、来園者は年々減少している。飼育環境の悪化を食い止めるため、林業省が2010年に特別チームを送り込んだ。しかし、その後も不審死や不法取引の疑惑が相次いでいる。
先月にはライオンがおりのドアを開閉するための金属製のロープで首をつった状態で死んだ。常識では考えられない状況。昨年7月から改善のため経営に参加したスラバヤ市公社のラトナ・アユングルム代表(園長)は「ライオンの死を発情期で行動が活発になった際の不幸な死という人がいるが、殺された可能性がある」と明言、市警に捜査を依頼した。警察の到着の前にライオンのおりの中が掃除されていたため、警察は園内部に容疑者がおり証拠隠滅した可能性もあると見て捜査している。
■えさも水も質悪く
これまでにもコモドドラゴンの行方不明や、12年3月に病死したキリンの胃袋からはプラスチック片が計20キロも見つかった。客が投げ入れたとされているが、キリンが自らプラスチックを食べるだろうか、疑問の声もある。
10〜11年の間、600匹近くが死に、ほとんどは肺炎など治療可能な病気だったと批判されている。ラトナ園長は「以前は果物の質が悪く、与えていた水も汚染されていた」と言う。水はスラバヤ川から引いていたが、昨年11月その汚染水の影響でコモドドラゴンが死んだ。食事も連続死の要因だった。今年もすでに7匹が死に、動物愛護団体は早期の閉園を訴える。ラトナ園長は「今年死んだ動物は自然界でかかる病気や老衰で、管理不足ではない」と話す。しかし問題は「園内の職員だ」と吐露した。(つづく3回連載)(高橋佳久、写真も)
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