小政党が反対で一致 与党内に新たな亀裂 「足切り」問題で

 二〇〇八年に制定された選挙法の改正をめぐり、連立与党内で新たな亀裂が表面化している。議席獲得に必要な得票率を定める「足切り規定」を従来の二・五%から四―五%に引き上げる政府方針に対し、連立与党の福祉正義党(PKS)、国民信託党(PAN)、開発統一党(PPP)、民族覚醒党(PKB)が野党のグリンドラ党、ハヌラ党と「中軸勢力(ポロス・トゥンガ)」と名付けた連合を結成して反対の姿勢を示している。

 足切り規定に賛成しているのは、ユドヨノ大統領率いる国会第一党の民主党と第二党のゴルカル党、第三党の闘争民主党(PDIP)の三大政党。三党は五%に引き上げても足切りに引っ掛からないとみられているが、当落線上にあるほかの小政党にとっては足切りの引き上げは死活問題だ。
 PKBのアブドゥル・マリック・ハラマイン議員は「連立与党連合事務局は与党内で頻繁に協議を行うために設立されたはずだが、大政党の利益しか重んじていないことが分かった」と主張。PPPのムハンマド・ロマフルムジイ幹事長は「仮に連合事務局がこの課題を取り扱わなければ、連立与党は分裂するだろう」と連立離脱の可能性を示唆した。
 足切りの引き上げをめぐっては、少数意見の切り捨ては民主主義の原則に反するとの批判が上がる一方、第一党の民主党ですら国会議席の二五%しか占めていない状況では国会運営が安定しないため、国会政党の数を減らすべきとの意見もある。

「多様性損なう」 地方政党消滅も

 政府の選挙制度の改定方針ではほかに、国会議員選挙で足切り規定を満たせなければ、州議会や県・市議会でも議席を獲得できないとする案が検討されており、改正されれば全国規模の基盤がなければ地方議会でも議席を獲得できないことになる。
 英字紙ジャカルタポストでは、華人人口の多い西カリマンタン州シンカワン県の県議会を例に挙げて説明。華人を支持基盤にする新インドネシア党(PIB)は現在、県議会の全二十五議席中四議席を占めているが、二〇〇九年の国会議員選挙でPIBは〇・一九%しか獲得できておらず、改正案が適用されれば議席を失うことになる。
 二〇〇九年の選挙前に設立された革新民主党(PDP)のディディ・スプリヤント幹事長は改正案に「この国の民主主義を壊す動機が横たわっている。専制政治を行いたいとする大政党の意図は憲法にも反している」と反発。
 非政府組織(NGO)選挙改革センター(CETRO)のハダル・グマイ代表は「インドネシアはいくつかの地域が社会的、文化的に独特の個性を持った多様性の国家だ。国家レベルの政治状況を地方政治にも当てはめるようになれば、(多様性の尊重という)インドネシアの美しき部分にも影響を与える」と批判した。

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