渋滞でローリー立ち往生 線路カーブで視界きかず ビンタロ電車事故
9日、南ジャカルタ・プサングラハン郡ビンタロ付近の踏切で電車がタンクローリーに衝突、ローリーとともに炎上し90人以上が死傷した事故で、渋滞でローリーが立ち往生したところへ電車が突っ込んだことが、警視庁の調べで分かった。線路は踏切の手前40メートルまで急カーブしており、前方の視界が利かず急停車できなかったとみられる。
衝突現場は南ジャカルタとビンタロを結ぶ踏切で、終日渋滞することで知られていた。調べによると、事故当時、渋滞で前方が混雑しているにもかかわらず、ローリーが踏切内に進入し、立ち往生したとみられる。
踏切脇には、24時間体制で常駐し、警報機と遮断機を操作する国鉄職員の詰め所がある。当直のパムジ氏は警察の取り調べに対し、踏切前後の渋滞でローリーが立ち往生したため、前方の遮断機を上げて前進させようとしたが、オートバイなどで身動きが取れなかったと供述しているという。
国鉄子会社で首都圏の路線を運営するKAIコミューター・ジャボデタベック(KCJ)は、事故電車は時速70キロで走行していたため、急ブレーキをかけた場合、脱線する可能性があったと説明。遮断機の操作や踏切設備の保守に問題はなかったとしている。
■踏切操作は手動
踏切の作業はすべて手動で行われている。踏切番は、電車が最寄りのポンドック・ランジ駅、クバヨラン・ラマ駅を出発した時点で駅職員から電話連絡を受け、詰め所内のスイッチを押して遮断機を下ろす。この後、遮断機横の警報機を鳴らし、マイクを使って、警報機に取り付けてあるスピーカーを通じて電車が来ることを伝えている。
しかし、遮断機が下りてから電車が通過するまで10〜15分かかることも多い。踏切周辺の住民ジュリアさん(45)は「なかなか電車が来ないので、遮断機をすり抜けて踏切内に進入する車やオートバイが後を絶たない。近隣の若者たちが勝手に車を誘導し、かえって身動きが取れなくなることもある」と話す。遮断機は長さ4メートルほどで、幅5メートルの道路すべては遮断できないという。
踏切前には乗り合いバスが停車する三差路があり、周辺は伝統市場や商店街でにぎわう。交通量も多く、踏切に進入した車やオートバイが電車に引きずられる人身事故が続発してきたが、抜本的な対策は取られてこなかった。
非番の踏切番スカンタ氏(46)は「踏切内で何かあっても、通過する電車の運転士に直接連絡する方法はない」と語る。スルポン方面の線路は踏切の手前約40メートルの地点でカーブしており、視界が悪い。運転士が線路内の障害物を関知して急ブレーキをかけたとしても間に合わず、緊急時の対処は踏切でするしかないという。
9日から10日にかけ、現場を2回視察したジョコウィ・ジャカルタ特別州知事は、今後の対策として踏切道の立体交差化を進めていくとの方針を表明。高架式か地下の道路建設に向け、早急に調査を実施し、渋滞緩和や踏切の安全確保に全力を挙げる考えを示した。(配島克彦)