警察官射殺される 汚職撲滅委前の大通り 3カ月で銃撃22件 南ジャカルタクニンガン
10日午後10時20分ごろ、南ジャカルタ・クニンガンの汚職撲滅委員会(KPK)庁舎前の大通りで、大型トラック6台の車列を警護していたオートバイの警察官に何者かが発砲、警察官は胸部などに被弾し、即死した。過去3カ月間に警察官や市民が射殺される事件が22件発生しているが、犯人グループや各事件の関連性は不明のままで、治安悪化に対する懸念が広がっている。
警察の調べによると、死亡したのは国家警察警備局配属の警察官スカルディさんで、北ジャカルタ・タンジュンプリオク港から、エレベーター用の鉄骨などを積んだ民間企業の大型トラック6台を先導し、クニンガンに建設中のラスナ・タワーの工事現場に向かっていた。
KPK庁舎の入口から20メートルほど手前のラスナ・サイド通りの低速車線で、スカルディさんはオートバイ2台に分乗した3人組に制止された。オートバイの後ろのシートに座っていた男が前方から3発発砲し、胸部や肩、腹部に命中し、スカルディさんは即死した。
国家警察は犯人グループはクニンガンから南下し、南ジャカルタ・マンパン方面へ逃げたとし、ジャカルタ各地で検問を強化。過激派組織との関係について捜査を進めている。また、犯行現場がKPK庁舎前だったため、犯人がKPKの汚職捜査と何らかの関係があり、意図的に選んだのかなどについても調べている。
KPKのアブラハム・サマッド委員長は、射殺事件がKPKに向けられた脅迫とは考えていないと話し、「われわれは汚職撲滅を使命と心得ており、(脅迫であったとしても)恐怖心はない」と言明。庁舎前にある監視カメラの記録を提供するなど、警察の捜査に協力したいと述べた。
非政府組織(NGO)の警察監視団(IPW)のネタ・パネ氏は、過去3カ月間に発生した22件の発砲事件のうち、まだ1人の容疑者しか逮捕されていないと指摘。市民を守る警察官が身元不明の犯人グループに次々と撃たれることで、市民の間に不安が広がっており、警察は早急に一連の事件を解明すべきだと訴えた。
アキル・モフタル憲法裁判所長官は、警察官を狙う犯人は国家への反逆者だとの見方を示し、「放置すれば規模が拡大しかねない」と警告。「武装した警察官でさえ射殺されるなら、他の政府機関の職員はどうなるのか」と述べ、法治国家の根底が揺さぶられると懸念した。 (配島克彦、写真も)