マンガ論に学生熱中 漫画家・日野氏ら講演 UI日大芸術学部 シンポジウム共催
インドネシア大学(UI)大学院日本地域研究科と日大芸術学部は4、5日、南ジャカルタの国際交流基金ジャカルタ日本文化センターで「日本のマンガ・文学」をテーマにシンポジウムを共催した。日本からホラー漫画家の日野日出志氏や文芸評論家の山崎行太郎氏など同大講師陣を迎え、世界各地で親しまれている日本のマンガの隠された魅力や創作方法などをめぐり、学生や大学講師ら出席者も参加しながら概説した。
インドネシアで24年間放映されている国内最長寿テレビ番組のアニメやインドネシア語版コミックで人気の「ドラえもん」について、まず日大芸術学部図書館長の清水正教授が第一話「未来の国からはるばると」の1ページ目を取り上げた。
参加者にコピーを配布し、1分間で読んだ後に伏せてもらい、「最初のコマに描かれていたもの」を質問。意外と覚えていない参加者に向け、長期連載となった主人公やキャラクターの設定を解き明かしていく。
ドストエフスキー作品やギリシャ神話を援用しながら「ドラえもんは劣等生・野比のび太の分身として登場し、分身が運命を変えるために未来からやってきた」と自論を展開。二頭身の丸い造形から「癒しや平和、幸福を感じる」と指摘した。
日野氏はマンガの創作方法を参加者と実践しながら伝授。作品のジャンルを決め、主人公とその周辺のキャラクターの性格を与えていく。「お父さんの職業は何がいい」と問い掛けると「モンスターハンター」と学生が即答し、登場人物の相関図を固めていく。さらに複数のエピソードを時間軸に並べ、生き生きとした物語を生み出すプロセスを解説した。
日野氏は1960年代後半にデビューし、猟奇的な作品を中心に450タイトルを発表してきた漫画家。インドネシアではまだ翻訳出版されていないジャンルでもあり、この日は会場で、参加者全員に代表作や論評などを収録した豪華装丁本「日本のマンガ家 日野日出志」を配り、サインを求める長蛇の列ができた。
これまで日野氏は、ちばてつや日本漫画家協会理事長らと海外のマンガサミットに参加。韓国などの漫画家との交流も深い。初訪問のインドネシアで、学生から「劇画は廃れたのか」などとさまざまな質問が寄せられ、交流を楽しんでいた。
シンポジウムを企画したUIのスーシー・オング氏は「学生には文化や社会問題など日本に関する幅広い知識を持ってほしいが、大学では日本語習得に終始しがち」と指摘。日本人による講義から学生が得るものは計り知れないと強調した。(配島克彦、写真も)