ハラル食じわじわと 日本の大学で導入広がる
イスラム圏からの留学生の要望の高まりを受け、日本の大学の学食でハラル食(イスラムの教義に沿った食べ物)の導入がじわじわと広がっている。ハラルの認定基準や提供方法などに悪戦苦闘しながらも、各大学の食堂が工夫を凝らしてハラル食を提供している。ムスリムが国民の約9割を占め、日本での食生活に不安を感じる人が多いインドネシアからの留学生誘致にも一役買いそうだ。
大阪大学の食堂は約20年前からハラルチキンのからあげと白身魚フライをメニューに加えている。留学生団体からの要望をきっかけに吹田キャンパスで初めて導入。今では豊中、箕面キャンパスも含めた三つの全キャンパスでハラル食の提供にこぎつけた。今後は学内で協議を重ね、ハラルとそうでないもので調理器具を分けているかといった調理過程の監査や、提供方法の細かいルールを再確認する。
京都大学は2005年から学内のレストランでハラルチキンを使った食事を提供している。4年前には別のカフェテリアでハラル・ケバブの販売も開始した。ムスリムの学生以外にも人気があり、売り上げは一日200〜250食ほどで全体の1割程度を占める。同大学生協は京都のイスラーム文化センターと包括的協力協定を結んでおり、ハラル認証や調理器具等の監査、仕入先の紹介などの協力を得ている。最近はハラル食導入を検討している他大学食堂からの見学もあるという。
ハラル食の提供には、ハラル食材とそれ以外のものを異なった油で揚げる必要があり、トングなどの調理器具も分けなければならないなどの細かい決まりがある。豚肉の成分やアルコールの使用は禁止されているため、使える調味料に制限があり味付けが難しい。
手間がかかることや厨房設備の問題でハラル食の導入を断念する大学もある。食堂と学内の留学生支援課のハラル食導入に向けた連携体制がなく、ノウハウや専門知識がない食堂側が主導しなければならないことも、大学によっては導入が難しいことの一因だ。
■ムスリム増加に対応
京大には現在、70人ほどのインドネシア人留学生がおり、京都市全体では150人を超える。10年間、京都に在住する京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程のインドネシア人留学生シャフウィナさん(44)はハラル食を歓迎する。
今後、インドネシアをはじめムスリムの留学生が増え、ハラル食の需要も増えると指摘する。「今学食にあるのはハラルチキンとケバブの2種類だけ。ハラル食が食べられるようになってうれしいが、もっと種類が増えてほしい」と話した。
20年を目途に30万人の留学生受け入れを目指す「留学生30万人計画」達成を目指し、文部科学省は「国際化拠点整備事業」(G30)で拠点に選ばれた13大学を中心に留学生誘致に力を入れている。うち11大学は、すでにハラル食を提供している。今後も留学生が増え、イスラム圏からの誘致も活発化する中で、ハラル食の需要も増えるとみられる。(立命館大学4回生・高口佳菜=インターン)