「露天商の総本山」落城か 撤去、移転以外の選択なし タナアバン
中央ジャカルタ・タナアバンの露天商移転で、州の強制撤去と改修工事が進展している。露天商の姿はレバラン(断食月明け大祭)帰省以降、路上から消えた。露天商にとっては、露店の強制撤去と警察の巡回による囲い込みで、移転先への入居以外の選択肢がなくなった格好。州内各地で進む露天商一掃プログラムで、真っ先に標的となった「露天商の総本山」が落城しそうだ。
移転先の州営市場ブロックGの3、4階の1062戸に968戸が入居する予定だが、スティヨソ知事時代の2004年に増築され、一時露天商が入居したが、客足が少ないため、再び路上に戻った経緯がある。以来、この「シャッター街」が移転先に挙がると、2畳程度の店舗スペースの狭さや、客が好まない上層階であることに露天商から不満が噴き出した。
ジョコウィ知事は老朽化した州営市場の改修を指示。11日から市場脇のと殺場を撤去し、公道と接続する階段を追加、頻発する冠水対策として下水工事を進めている。警察は地元と協力して、市場脇から橋にかけての売春を一掃。客足を増やすと期待されるがスティヨソ時代から建設が止まっている、付近の州営市場との連絡橋も開通させる見通しだ。
州はブロックGの賃料を半年間無料にし、以降も3平米の1区画を2年間で1500万ルピア(約15万円)に抑える予定。立地によっては月150万ルピアに達していたプレマン(チンピラ)への場所代、警備代に比べて安く抑えられ、市場構内での商売が成り立つよう配慮している。
さらに警察は24時間体勢で巡回を続け、露天商の商売再開をけん制。露天商らが路上に造った建築物を撤去し、道幅を広げ、緑地化する工事が進む。
露天商と共生関係にあったプレマンは当初、移転に反対していたが、一転して賛成の姿勢を取った。タナアバン一帯で影響力の強い開発統一党(PPP)と関係の深い団体によると、マルク州アンボン系、バンテン系、ブタウィ(ジャカルタ土着の民族)系など20ほどの団体があり、そのすべてが知事の方針を支持している。
ジョコウィ知事は13日、14日と立て続けに現場を視察し、「露天商は全員移転先に入居できる」と語った。露天商、プレマンに対して強硬な発言で物議をかもしたアホック知事は、この問題から距離を取っている。服飾の路面店を営業するスルヤさん(60)は「ジョコウィ知事のおかげで道が広くなり、商売がしやすくなった。再開発の手が入ることに期待する」と喜んだ。タナアバンは官庁街近くの首都中心部に位置し、目抜き通りのマス・マンシュール通りは、モール街のサトリオ通りに接続する好立地だ。一方、キオスク(売店)を撤去されたロニさん(40)は「行き先を失った。どこにいけばいいのか」と話すなど、明暗が分かれた。(吉田拓史、写真も)
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