帰りなん、ふるさとへ タナアバン露天商移転
パンジャルさん(45)はトラックの荷台の縁に身を持たれかけて放心していた。その後ろで兄のナカディさん(50)が黙々と荷物を荷台に運び込んでいく。
ジャカルタ特別州が中央ジャカルタ・タナアバンの露天商の強制撤去を始めて2日目。同日までに大方が撤去された。
パンジャルさんが州営市場ブロックG裏の道路脇でワルン(屋台)を始めたのが1990年。西ジャワ州インドラマユ県から移り住んだ。同県はジャカルタへの流入者が多いことで知られる。ワルンは住宅と兼用で家族で寝食を共にした。ブロックGの商店主らが通う店だったという。
レバラン(断食月明け大祭)で帰省していたが、11日に近所の友人から連絡があり、兄のピックアップトラックで引き返してきた。ワルンは州警備隊らが同日、強制撤去。がれきの山の前で呆然とした。
州は立ち退き場所に木々を植え、公園にする計画だ。「公園にするなら、わざわざ住人を撤去しなくてもいいのに」と夫人のスミヤティさん(46)は悔しさを隠さない。
23年間続いたワルンはなくなり、残った家財道具もろとも、故郷に引き返すことにした。「兄の土地の一部を譲ってもらい、農業をする」とパンジャルさん。まだ10歳の娘のためにも働かなくてはいけない。 (吉田拓史、写真も)
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