酒類規制令は無効 強硬派の主張認める 最高裁 販売許可の議論過熱
最高裁は4日、イスラム強硬派団体イスラム擁護戦線(FPI)が請求した司法審査で、アルコール飲料販売規制に関する大統領令(1997年3号)を無効とする判決を下したと明らかにした。ホテルやレストランなど特定の場所でのアルコール飲料販売を認める法的根拠となっていた同大統領令が撤廃されたことにより、アルコール飲料の販売規制をめぐる議論が過熱しそうだ。
故スハルト元大統領が発令した同大統領令は、礼拝所や学校、病院周辺を除く地域で、アルコール含有量5%以下の酒類の販売を認めている。含有量がそれ以上のものは、政府が指定するホテルやバー、レストランなどに制限すると定めていた。
最高裁は6月中旬の審理で、同令は保健法、消費者保護法、食糧法に反すると判断。市民生活の秩序を維持することにならないと指摘した。
これまで20を超える地方自治体が、イスラムで禁じられているアルコール飲料の販売を禁止する条例を発令していたが、内務省は2011年、上位法令である同大統領令に反するとして、条例廃止を勧告。バンテン州タンゲラン市、西ジャワ州インドラマユ県、西ジャワ州バンドン市の条例を無効とした。
アルコール飲料を販売しているとして、クラブやバー、屋台などへの襲撃を繰り返してきたFPIは、内務省の条例廃止勧告に抗議し、12年1月には内務省庁舎を襲撃。同年10月に最高裁へ同大統領令の司法審査を請求していた。
最高裁の判決に対し、ファウジ内相は5日、内務省が11年に無効とした3条例の有効性などについては今後協議していくとの意向を示した。
FPIは判決を歓迎するとし、政府がアルコール飲料の販売を許可する法的根拠はなくなり、流通業者を厳重に取り締まるべきだと訴えた。インドネシア第二のイスラム団体ムハマディアやイスラム保守系の開発統一党(PPP)も、飲酒を禁じるイスラムの教義に沿った判決を歓迎するとしている。
PPPのアフマッド・ヤニ国会議員は5日、「各自治体が条例を出すのではなく、アルコール飲料規制法案の審議を加速し、国レベルで細則を定めるべきだ」と主張。地酒「アラック」などの密造や密売などの問題も含め、政府がアルコール飲料への規制を強化するための法整備を急ぐべきだと訴えた。
経済成長の続くインドネシアで、国内のアルコール飲料の販売額は過去3年間に毎年約20%の増加を記録。ホテルやレストラン、バーをはじめ、小売店ではビールやウォッカ、ブドウ酒、地酒など多様なアルコール飲料が販売されている。 (宮平麻里子)