シーア派難民を強制排除「治安維持」で内相容認 マドゥラ島サンパン県
東ジャワ州マドゥラ島サンパン県政府は20日、昨年8月の住民衝突以降、県内のスポーツ施設で避難生活を送っていたシーア派信者の約160人を強制的に退去させた。子どもを含む難民をバスに乗せ、同州シドアルジョへ移す強硬策で、「治安維持」の旗印の元、中央政府も容認する姿勢を示した。難民は故郷に戻ることを許されず、再び未知の土地での生活を余儀なくされる。
難民の強制排除の理由について県警は、20日に避難所近くで数千人が参加するスンニ派の祈祷集会があり、「衝突を回避するため」と説明。難民の一人、ムハンマド・ザイニさんによると20日昼、スポーツ施設の周りをマドゥラ島からの移住を求める人々が取り囲んだ。衝突再発への懸念を理由に県政府側が難民側に同州シドアルジョへの移転を要求。難民側は拒否したため武装警察などが強制的に難民をバスに乗せ、シドアルジョの農業複合施設「プスパ・アグロ」のアパートへ移送した。
バスの中でザイニさんは「女性や子どももいたが無理矢理引っ張られてバスに乗せられた。行き先に食べ物や住む場所があるのかさえ聞かされていない」と声を荒げた。県側は1週間後には帰還の許可を出すとしているが、ザイニさんは「帰れるとは誰も信じていない。私たちは追い出されたんだ」と語った。
シーア派信者と他の住民の衝突回避のため、シーア派信者の移転を掲げたファナン・ハシブ知事が今年2月に再選。住民の「お墨付き」を得た同知事は難民への食糧の配給停止や州・中央政府に移転許可を求めるなど強硬姿勢を強めていた。
マルズキ・アリー国会議長(民主党)は20日、シドアルジョのプスパ・アグロを避難所とすることで東ジャワ州知事と合意していたと明かした。ガマワン・ファウジ内相は、問題は地元で解決すべきとした上で、「マドゥラ島に留まれば再び衝突が起きる可能性もある」と対立再燃を懸念し、強制排除を容認する姿勢を示した。
シーア派信者らは昨年8月、スンニ派住民とのトラブルをきっかけに襲撃を受け1人が死亡、家40軒が放火され、スポーツ施設で避難生活を続けていた。(堀之内健史)